「QA Co-AI」は検出を25%増、時間を50%短縮、コストを最大40%削減
RazerのAIソフトウェアの1つ「QA Co-AI」は、ゲーム開発の中でも特に時間のかかるテスト工程を効率化することを目的としている。ゲームが意図通りに動作するかを検証するテスト工程は、レビューや商業的成功に直結する重要なプロセスだ。米国のソフトウェアテスト企業Qestitによれば、Razerの技術は手作業のテストと比べてバグ検出25%増、テスト時間50%短縮、生産コスト最大40%削減が可能という。
QA Co-AIは現在、大手スタジオからインディー系まで約50の開発者がベータテスト中で、年末までにAWSマーケットプレイスを通じて世界展開する予定だ。タンは「ゲームの品質保証(QA)は軽視されがちだ。誰もがゲームデザインの話をするが、QAについて語る人はほとんどいない。しかしゲーム開発にとって極めて重要な工程なのだ」と語る。
このソフトには、バグ検出用のテンプレートがあらかじめ組み込まれており、さまざまなジャンルのゲームに対応できる。例えば、2D横スクロール(スーパーマリオブラザーズのようにキャラクターが左右に移動するタイプのゲーム)が突然ブームになった場合、Razerはそのジャンル向けのQA-AIモデルを即座に構築し、開発者が参入を決めた時点で投入できる。タンは、「このようなツールによって、人気ジャンルに挑戦したくてもリソース不足で踏み出せなかった開発者を後押しできる」と述べている。
「Razer Game Co-AI」はリアルタイムで攻略を支援、ゲーム画面を切り替えずに指示
もうひとつのAIツール「Razer Game Co-AI」は、難しいクエストやパズルに挑むプレイヤーをリアルタイムでコーチングするもの。スキルを磨きたい本格派から手軽に楽しみたいカジュアル層まで幅広く利用できる。「このツールがあれば、もうゲームで行き詰まることはなくなる。ゲーマーたちはこれまで、YouTubeの攻略動画を探してから戻ってプレイしていたが、Game Co-AIなら体験が途切れることなく続く」とタンは語る。
このツールのベータテストに参加したユーザーの1人は、「これは大きな前進だ。動画を眺めるだけではなく、自分が失敗した正確な場面を繰り返しプレイし、正しくクリアできるまで練習できる」と機密保持契約のために匿名を条件に話した。この人物はまた、「AIは私のプレイスタイルを学習しており、フルチームを組んだりフルマッチをこなしたりしなくても上達できるように後押ししてくれる」と付け加えた。
このソフトウェアの訓練には、トップレベルのeスポーツ選手やチームのゲーム映像データが使われている。たとえば、『リーグ・オブ・レジェンド』のスター選手、イ・サンヒョク(通称Faker)、OpTic、Sentinelsといった同社eスポーツ部門「Team Razer」と提携している選手だ。タンは「私たちはeスポーツ界のナイキのような存在だ」と語る。
RazerのAIツールは、独自に開発した大規模言語モデル(LLM)と、OpenAIやAnthropicのような大手のシステムを組み合わせて動作している。タンは「私たちは特定のモデルにこだわらない」と説明する。「自社のモデルが最適だと思う場面もあるが、映像生成や複雑な計画に関してはオープンソースソフトウェアが優れている場合もある。あるいは外部のAI企業と協力することもある」
タンの描くビジョンは、世界各地に精鋭のAIチームを展開することだ。シンガポールではエンジニアリング、データサイエンス、ゲーム開発など幅広い分野で150人規模のAIスペシャリストを採用する計画だ。過去8カ月で3倍に増えた50人体制を、より拡充する。同社の採用活動はシンガポール政府の支援も受けている。さらに今後は、欧州や米国にもAI拠点を設ける方針だ。
RazerのCSOのリーは「これは単なる採用活動ではなく、エコシステム全体を巻き込み、AIゲーム分野の関心を当社に引き寄せる狙いがある」と語る。
タンはまた、「AIは生産性を高め、非常に短い時間で多くのことをこなせるようになる」と話す。「その分、自由な時間が増える。人々は、その時間をどう使うのか? おそらく、ゲームに割く時間もさらに増えるだろう」とタンは語った。


