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2025.09.07 14:30

ゲーミングPC大手Razer、ゲーム攻略支援AIを掲げ「業界を根底から覆す」

Photo Illustration by Pavlo Gonchar/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

UnityとKeywordがテストで先行、テンセントとクラフトンがAI活用事例を示す

しかし、Razerにはこの分野で先行する競合が存在する。「ゲーム開発のテスト領域は、すでにサンフランシスコのUnity TechnologiesとアイルランドのEQT傘下のKeyword Studiosが押さえている。米国のGGWPやMobalyticsは、プレイヤーのスキルを正確に解析して指導するサービスで存在感を示している」とユーロモニターのルー・ウィー・テックは指摘した。

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「Razerは、競合がすでに陣地を固め照準を定めているAIゲームツールのバトルロワイヤルに飛び込もうとしている」とルーは続けた。

またアジアでは、中国大手テンセントがAIを使って仮想世界を従来の数分の1の時間と人員で自動生成。韓国クラフトンは、プレイヤーの行動に応じて即興で反応するノンプレイヤーキャラクターをAIで動かしている。

年商は約1470億円、ソフト利用者は2億人――アジア太平洋の純利益は大幅減

RazerはAI戦略への投資額を明らかにしていないが、タンは「非公開企業であることが、大胆な意思決定を可能にしている」と語り、「その多くはバランスシートから直接投資している」と付け加えた。

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シンガポールと米カリフォルニア州アーバインの2拠点に本社を置く同社は、「世界のゲーム用周辺機器市場を代表するブランド」として、年間売上高が10億ドル(約1470億円)規模に達していると述べている。この水準は2021年に公表された数字とほぼ同じで、同社のソフトウェアスイートの利用者数は2億人を超えるという。

Razerは、上場廃止以降に世界全体の業績を開示していないが、シンガポールの規制当局への提出書類によると、2024年のアジア太平洋地域の売上高は、前年並みの7億800万シンガポールドル(約814億円。1シンガポールドル=115円換算)だった。一方、同期間の純利益は3540万シンガポールドル(約41億円)から300万シンガポールドル(約3億4500万円)へと9割以上も減少した。同社はこの利益の急減についてコメントを控え、提出書類は世界全体の業績を示すものではないと説明した。

フォーブスは、Razerの大株主であるタンの保有資産を17億ドル(約2499億円)と推定している。彼は、シンガポールの長者番付トップ50で33位にランクインしている。

創業者タンの経歴と過去の多角化戦略の軌跡

幼い頃から熱心なゲーマーだったタンは、シンガポール国立大学で法律を学んでいた学生時代に、レスポンスに優れたマウスなどの本格的なゲーム専用アクセサリーの会社を立ち上げようと考えたという。その後、オンラインゲームでロバート・クラコフと出会う。クラコフは米国のコンピュータ周辺機器メーカーKärnaでゼネラルマネジャーを務めていた。この出会いをきっかけに、2人は世界初のPCゲーミングマウスを共同設計。のちにRazerを立ち上げ、高性能のゲーミング機器の開発と販売を始めた。

2011年までにRazerはゲーミングハードウェアの世界的ブランドに成長し、スイスのLogitech、米国のCorsairといったライバルと競い合うまでになった。その時点でタンは、自社製品の設定をカスタマイズして複数のデバイスで同期できる「Razer Synapse 2.0」に注力した。「すべてのゲーミング周辺機器をクラウドに接続したのは当社が初めてだ」とタンは語る。そして、この先行投資が、ハードウェアと連動するソフトウェアの基盤を築いた。その代表例としては、照明やカラーでゲーム環境を個別に演出できる「Chroma RGB」や、設定を最適化してゲーム性能を高める「Cortex」などのソフトが挙げられる。

その後タンは、Razerが抱える膨大な顧客基盤をさらに活用しようと模索したが、成果はまちまちだった。2014年には、スマートフィットネスバンド「Nabu」を発売したものの、2年後には「コア事業のゲーミング製品に集中する」としてひっそりと終了した。続いてフィンテック分野に乗り出し、ゲーム内課金向けの決済サービス「Razer Gold」を立ち上げた。このサービスは昨年、テンセントや米国のブリザード・エンターテインメントのタイトルを含む7万本以上のゲームで、100億ドル(約1.47兆円)超の決済を処理したとタンは述べている。

また2018年にはマレーシアで電子ウォレットを発表し、数カ月後にはシンガポールでも展開したが、競争の激しい市場で存在感を得るのに苦戦した。若者やミレニアル世代を狙ったこの事業は3年で終了し、その際同社は「フィンテックソリューションに注力する」と説明した。Razerは、さらに「グローバル・ユース・バンク」と称したデジタル銀行のライセンスをシンガポール当局に申請した。しかし2020年に却下され、銀行業への参入に頓挫した。それでも同社は東南アジア全域で決済ゲートウェイ事業を継続している。

Razerがソフトウェア事業の加速を目指すなか、タンは新たに開発中の2つのAIツールに大きな期待を寄せている。「今後2、3年のうちに、AI関連のゲーム収益が我々の売上の大きな部分を占めるようになるだろう」とタンは見込んでいる。

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編集=上田裕資

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