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2025.09.07 14:30

ゲーミングPC大手Razer、ゲーム攻略支援AIを掲げ「業界を根底から覆す」

Photo Illustration by Pavlo Gonchar/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

CVCが関与し約4704億円で非公開化、再上場を視野

こうした戦略転換は、同社の資本政策とも密接に結びついている。非上場企業であるRazerの株式は、約3分の2をタンと取締役のビリオネア、リン・カリンが保有する。AIの活用は、彼らにとってはもちろん、欧州の大手投資会社CVCキャピタル・パートナーズを含む投資家たちにとっても重要だ。利益と企業価値を押し上げ、再上場への道を開く可能性があるからだ。

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今から約3年前、香港市場に上場していたRazerが株価の低迷に直面した際、投資家は32億ドル(約4704億円)で非公開化を決めた。この取引は、同社を1株当たり2.82香港ドル(約54円。1香港ドル=19円換算)と評価するもので、これは2017年の新規株式公開(IPO)時の3.88香港ドル(約74円)を27%下回る水準だった。

タンは、AI事業の収益目標を定めるのは時期尚早だと語る。「この試みは、まだ初期段階にあり、どう収益化するかを模索している段階だ」とタンは述べ、AIツールのサブスクリプションや、AIモデルをゲーム会社に提供するライセンス契約などのビジネスモデルを検討中だとした。「ただ1つはっきりしているのは、これらの製品やサービスに非常に大きな需要があるということだ」。

一方、PitchBookのベロモは「これは進化の途中にあるビジネスモデルだ」と指摘した。さらに「AIを活用した収益源をすでに拡大している企業もある一方で、AIが価格決定力を維持できるかどうかを試している段階の企業もある」と語った。

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シンガポールの投資アドバイザリー会社Aletheia Capitalで消費者・インターネット分野の調査を統括するニルグナン・ティルチェルヴァムは、AIツールによってRazerが成功を収めれば「ハードウェア中心の企業から高利益率のソフトウェアサービスのプラットフォームへと変貌を遂げる可能性がある」と見ている。

もっとも、Razerが事業の中核をゲーム機器以外へと広げるのは今回が初めてではない。2005年に同社を共同創業したタンは、プロのゲーマーや愛好家向けのPCやマウス、キーボード、ヘッドセットといったプレミアムなデバイスを軸にして事業を築いた。翌2006年、プレイヤーが自分の設定をオンラインに保存できるアプリ「Synapse」を立ち上げて、クラウドゲーミング分野に他社に先駆けて参入した。このアプリはその後、Razerの製品を支えるクラウドベースのエコシステムへと発展した。

同社の最高戦略責任者(CSO)のリー・メン・リーは「多くの人がRazerを優れたハードウェアの会社として認識しているが、実際にはこの15年間を通じてソフトウェア基盤を拡充してきた」と語っている。

AIがゲーム開発を革新し新たな収益を生む、そう考えるタンは、Razerがこれまで築いてきたゲーム業界との深いつながりが役立つことを期待している。同社は世界で5万5000人のゲーム開発者とつながっており、業界の動きを的確に把握できる。「私たちはゲーマーが関心を寄せるジャンルをいち早く見極め、そこに資源を注ぎ込む。それは、MOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトルアリーナ)やTPS(三人称シューティング)といった分野だ。もし特定のジャンルが盛り上がり、多くのプレイヤーが集まっていると分かれば、その分野に合わせたツールの開発に取りかかる」

一方、Aletheia Capitalのティルチェルヴァムは「AIの進化はとても速いため、Razerには機敏かつ柔軟に動く力が求められる」と指摘する。ゲーム市場が飽和し、制作費が急騰し、スタジオが支出削減を迫られている中で、プレイヤーはますますリアルで没入感があり、かつバグのないゲーム体験を求めている。しかし、多額の投資をしてもヒットが保証されるわけではない。だからこそ、開発の効率化とコスト削減を実現できるAIソフトウェアツールは、多くのゲームスタジオにとって大きな魅力となっているのだ。

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編集=上田裕資

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