宇宙

2025.09.07 17:00

進化が恒星間文明の構築に「不利」に働く理由、地球外知的生命体と人類の収斂進化

太陽系を離れて星間空間を進むNASAの探査機ボイジャー1号を描いた想像図(NASA/JPL-Caltech)

ダーウィンがやはり有効

ブライソンによると、太陽系外惑星においても、これまで述べてきたのと同様のダーウィンの進化原理が有効である可能性が高い。地球外生命体は、身体形状が人類と類似するとは必ずしも予想できないものの、収斂的な行動様式が類似していることが予想されるという。

advertisement

ホルモン(生理活性物質)もまた、各生物種の長期的な運命に影響を与えていると、ブライソンは指摘する。

オキシトシンなどの、協調性のある行動を促進するホルモンの中には、同時にゼノフォビア(外来者に対する恐怖や嫌悪感)を引き起こすものがあるという。従って、もし地球外生命体が宇宙旅行のレベルにあるならば、ゼノフォビアなどの人類と類似する行動様式の一部を持っている可能性が高いと、ブライソンは説明している。

地球では、ゼノフォビアは冷戦中のように新技術の探究を活性化させる可能性があるともいえる。だが最近では、長期の宇宙探査計画の支持層はほとんど存在しないように思われる。物理学者や航空宇宙技術者のキャリア期間は、おそらく最大でも50年だろう。となると、宇宙開発や恒星間旅行に関する長期的な検討を円滑に進めるには、カテドラル・シンキング(大聖堂建設に必要な思考法)がほぼ不可欠となる。

advertisement

すなわち、欧州の大聖堂建設の歴史の中で行われてきたように、文明規模のプロジェクトに取り組むためには、単一の世代の先を見通さなければならないわけだ。典型的な例として、英国のウィンチェスター大聖堂は建設に500年近く、ドイツのケルン大聖堂は完成に600年以上をそれぞれ要している。

20世紀に人類は、動力付き重航空機による初の有人飛行から100年以内に、宇宙飛行士を月に降り立たせた。月面歩行は目覚ましい偉業だが、その後は数十年間にわたり、有人宇宙飛行の限界範囲を押し広げることに関する倦怠感と優柔不断の期間が続いた。

地球外生命体についてはどうか?

ブライソンによると、進化は、1000年計画を実行する生物ではなく、近い未来に気を配る生物に見返りを与える傾向がある。どこの世界でも、命が危険に晒されたり資源量が激しく変動したりする場合には、すぐ目の前にあるものを掴むのだと、ブライソンは説明する。より安全で、より長続きする状況にある場合に限り、視野が少し広がる(そしてその時でさえ、短期的な関心事が完全に消えることはない)と、ブライソンは続けた。

関与の欠如

悲観的だといわれるかもしれないが、もし地球外生命体に人類と類似点があるならば、恒星間旅行に必要となる画期的な推進装置の研究開発に多大な努力を注ぐことはないに違いない。

人類と同様の収斂的な行動様式のせいで、彼らもまた長期的な投資が得意ではないだろうと、ブライソンは考えている。

まとめ

恒星間距離を横断するには、空想技術のワープ航法の必要性と同程度に、文明レベルの深い関与が必要になると、ブライソンは指摘する。高度に社会的な地球外知的生命体にとっても、恒星間への真の取り組みは極めて稀で、長続きせず、突発的に生じるものであるに違いないと、ブライソンは続けた。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事