北米

2025.09.05 10:30

米民間雇用は市場予想を「大幅に下回る」、利下げを後押しする内容に

Jeffrey Greenberg/Universal Images Group via Getty Images

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米国における民間部門の雇用は8月に再び減速した。民間の給与計算処理会社ADPが米国時間9月4日に発表した報告によれば、これは労働市場の成長鈍化を示す最新の兆候だという。ドナルド・トランプ米大統領が求める利下げを後押しする内容となった。

ADPによると、民間部門の雇用は8月に5万4000人増加したが、前月の10万6000人増加から鈍化し、さらにFactSetによる市場予想の8万5000人も大きく下回った。

ADPの報告によれば、貿易、運輸、公益事業関連の雇用は前月比で1万7000人減少し、教育・医療サービスも1万2000人減少した。一方、レジャー・接客業では急増が見られ、8月に5万人の雇用が追加された。

労働省は4日、失業保険申請件数が先週23万7000件に増加したと発表した。これは6月以来の高水準で、前週から8000件増加し、市場予想の23万1000件を上回った。また、その前日には労働統計局(BLS)が7月の求人件数を発表し、パンデミック以降で最低水準だったことが分かった。

ADPのチーフエコノミストであるネラ・リチャードソンは声明で「年初は力強い雇用成長で始まったが、その勢いは不確実性によって揺さぶられている」と述べた。リチャードソンは、民間雇用の鈍化の要因として「労働力不足、消費者の不安、AIによる混乱」など「さまざまな要因」が考えられるとした。

BLSは5日に非農業部門の雇用者数と失業率のデータを発表する予定だ。これは、2024年の選挙でデータ操作を行ったとトランプに非難されたエリカ・マッカンターファー局長の解任以来、初の発表となる。FactSetによれば、市場は8月の失業率を4.2%と予想しており、雇用者数は8万人の増加を見込んでいる。

CMEのFedWatchツールによれば、次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で少なくとも0.25ポイントの利下げが行われる確率は97.4%と予想されている。米国の政策金利は昨年12月以来、4.25%から4.5%のレンジに据え置かれている。

連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを検討する前提として、完全雇用とインフレの安定という二重の使命を掲げている。労働市場の冷え込みは、FRBがまもなく金融緩和に転じるとの観測を強めている。パウエル議長は、過去数カ月にわたりトランプや共和党関係者から圧力を受けているにもかかわらず、利下げについては雇用とインフレの新たなデータを待つ方針を示してきた。

LPLフィナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチは先月、「労働市場の弱体化」に焦点を当てるパウエルら金融当局者の判断により、FRBが利下げに踏み切るだろうと記している。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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