イノベーションが、孤立した状況下で生まれることはめったにない。現代では、複数の企業や組織によるパートナーシップが推進力となって、多大なインパクトをもつ大躍進が生まれる状況が加速している。それは戦略的で意外性があり、時には型にはまらない異例の協働がなせるわざだ。
テクノロジーの最良の活用例の多くは、優れたパートナーシップの直接的な産物と言える。これは、テクノロジーの導入推進を目指す企業についても、テクノロジー分野のリーダーについても、当てはまることだ。
AI(人工知能)であれ、クリーンエネルギーであれ、デジタルヘルスであれ、イノベーションに至る道筋を切り開いているのは、単独のディスラプター(デジタルテクノロジーの活用により、既存の業界秩序やビジネスモデルなどを破壊するプレイヤー)ではなく、技術提携によって強みを結集し、弱点を補い合い、単独では成し得ないペースで共に前進していくパートナーシップだ。
パートナーシップがかつてないほど重視されている理由
かつて、イノベーションを達成する上で肝心だったのは、研究開発拠点から知的財産、さらにサプライチェーンまですべて自社で所有することだった。しかし今では、テクノロジーを取り巻く課題の複雑化や変化のスピード、コスト効率、世界展開へのプレッシャーによって、状況は一変している。企業が何もかもを単独でやり遂げることは、もはや不可能なのだ。
組織は、賢明な技術提携によって次のようなことが可能になる。
・リスクとコストを共有する。
・市場参入までにかかる時間を短縮できる。
・能力を補完し合える。
・信頼性と信用度を、より迅速に獲得できる。
・新たな顧客層や地域、データにアクセスできる。
マイクロソフトとOpenAIの技術提携を例に取ろう。マイクロソフトは、OpenAIに投資しただけではない。OpenAIのモデルを自社製品に高度に統合し、自社ユーザーが高性能の生成AIツールを使えるようにした。こうした提携で両社のイノベーションは一気に加速し、無数の企業や組織がAIを利用できるようになった。そうでなければ、匹敵するモデルを構築するのに何年も要しただろう。
また、ヘルスケア分野でのAI活用は、可能性に満ちている一方でリスクも多い。そこでグーグルは、リスクを回避しながら可能性を追求するべく、米医療機関Mayo Clinic(メイヨー・クリニック)と戦略的な技術提携を結んだ。両者は、AI診断ツールの開発とテスト、データプライバシーの確保、臨床ワークフローの最適化に取り組んでいる。
この提携にあたってメイヨー・クリニックは、長年蓄積してきた医学の専門知識と実環境データを提供し、グーグルはクラウド、AIと機械学習(ML)、大規模な計算能力を提供した。その結果、迅速なプロトタイピング(試作)が可能になり、重要な倫理的枠組みが構築されたほか、今日から10年後まで患者ケアに長く続く影響を与えるであろうイノベーションのロードマップを描くことができた。



