地球の気候を記録する「タイムカプセル」となったグレート・ブルーホール
2018年の探査により、グレート・ブルーホールのすべての地形を収めた完全版マップが初めて作製された。しかしその後の科学者の研究により、この陥没孔の最大の秘密は、底に堆積しているものだったことが明らかにされた。
2020年11月に発表された論文では、グレート・ブルーホールの底からボーリングコア試料(地層を円筒状に掘削して採取した地質のサンプル)として9m弱の堆積物を採取した結果、カリブ海における1885年間にわたる気候変動の記録が明らかになった。
堆積物の各層は歴史書の1ページのようなもので、海水温や嵐の活動状況、さらには人間が気候に与えた影響が時と共にどう変化してきたかを教えてくれる。
この研究結果により、海水温が2000年近くにわたって上昇を続けていることが裏付けられた。さらにこの海水温上昇には、「エルニーニョ」や「大西洋数十年規模振動(AMO:Atlantic Multidecadal Oscillation)」のような長期的な気候パターンが大きな役割を果たしていることも判明した。
また、採取された堆積物は西暦900年から1300年までの期間に、ハリケーン活動のピークがあったことも示していた。これは、中世の温暖期(Medieval Warm Period:MWP)という名で知られる時期にあたる。この期間には、嵐の強さと頻度が高まって海岸線が侵食され、その結果、グレート・ブルーホールに流れ込む堆積物が増えたことがわかった。
しかし最も驚くべき発見は、この堆積物に、近代以降の人間が与えた影響が刻まれていたことだ。研究では、1900年を境として、炭素の組成が突如として変化することが判明した。これはスース効果と呼ばれる現象で、産業革命と化石燃料に起因する炭素排出量増大を原因とするものだ(Suess effect:化石燃料の消費が増大したことで、大気中の放射性炭素[C14]の濃度が減少する現象)。
都市部から遠く離れた海の底に存在し、当初はその自然の美しさから探査の対象となったブルーホールにさえ、人間が引き起こした気候変動の証拠が刻まれているのだ。


