サイエンス

2025.09.06 18:00

低い酸素濃度、生物の進化を決定づけた地球の「退屈な10億年」

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この現象は、フィードバックループによって生じた可能性が高い。初期の酸素をつくっていたシアノバクテリアが、意図せずして、まさにその酸素によって自らの発展にブレーキをかけたのだ。

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その説によれば、窒素固定に欠かせないニトロゲナーゼという酵素が、酸素によって破壊されたという。酸素濃度がじりじりと上昇するにつれて、生物の生命維持に必要な窒素循環が持続しにくくなっていったのだ。

もう一つの主要な元凶の候補が、硫黄を好む微生物だ。海を支配していたそうした微生物が、低酸素かつ高硫黄条件のサイクルに地球をはまりこませた可能性もある。『米国科学アカデミー紀要』で2009年9月に発表された研究では、硫黄の豊富な海で栄えていたそうした微生物が、地球を低酸素状態に封じ込めていたことが示唆されている。

停滞は、触媒でもあった

退屈な10億年によって得られた長期間の「安定」の間に、地球のシステムは、生化学や地球化学の重要プロセスを微調整していた。そしてそれが、その後の複雑さの土台につながった。

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長く続いた酸素濃度の横ばいがついに破られ、大気中と海の酸素濃度が急上昇したとき、その上昇の原動力となったのは、光合成を活発化させて炭素循環を変えた微生物や藻類の活動の変化だった。

こうした新たな酸素の流入が、複雑な生物へと至る重要な転換点になった。

超大陸ロディニアの分裂も、天秤をさらにそちら側へと傾けた。退屈な10億年の間、ロディニアは超大陸のまま保たれ、海流と湧昇による栄養素の上昇を制限していたが、この時期の終わりに分裂を始めた。

それと同時に海流が強まり、それまで停滞していた海域全体で、酸素と栄養素が再分配された。こうした地殻運動の大変動が、生物進化による変化を加速させ、生物多様化のお膳立てをした可能性がある。

酸素濃度の上昇、栄養循環の強化、海流の変化に伴い、地球の長い休眠期は、劇的なかたちで終わりを告げた。

5億4000万年前までには、生物の急激な多様化である「カンブリア爆発」が進行していた。これにより、複雑な多細胞生物や、捕食行動が出現し、現代の生態系の基礎ができたのだ。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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