宇宙

2025.09.06 13:00

マスクのスターシップ、26年火星着陸と27年月面着陸が不可能な理由

(c)SpaceX

(c)SpaceX

日本時間8月27日、スペースXの超大型機「スターシップ」が打ち上げられ、同機10回目となる飛行テスト「IFT 10(Integrated Flight Test 10)」が行われた。

スターシップの仕様がV1からV2に変わったIFT 7(2025年1月)以降、シップと呼ばれる上段は3機連続で飛行中に崩壊し、さらに6月には、地上でのエンジン燃焼テスト中、突然シップが爆発するなどトラブルが続いた。

しかし、今回のIFT 10では予定されたテスト項目のほぼすべてを完遂。スターリンク衛星のダミーを宇宙空間に放出することにも成功し、シップはインド洋の予定地点にわずか3mの誤差で着水した。この結果を受けてスペースXは、「主要な目標はすべて達成された」と宣言した。

ただし、その開発は大幅に遅延している。2026年の火星着陸、2027年の有人月面着陸という2つのミッションが予定されるスターシップには、いまだ残された課題が多く、イーロン・マスク氏が目指す境地はあまりにも高い。

スターシップIFT 10のリフトオフ。ブースターに搭載された33基すべてのラプターエンジンの点火に成功。1分33秒後に1基停止したが、アメリカ湾への着水は無事制御された(c)SpaceX
スターシップIFT 10のリフトオフ。ブースターに搭載された33基すべてのラプターエンジンの点火に成功。1分33秒後に1基停止したが、アメリカ湾への着水は無事制御された(c)SpaceX

2025年、発射台タワーへの捕獲着陸

スペースXは、2026年に5機のスターシップを打ち上げ、2027年前半に火星への着陸を試みる。それらの機体には、ヒトの代わりにテスラのヒト型ロボット「オプティマス」が搭乗する。同ミッションは、すべてスペースXの自己資金によるものだ。

スペースXのプライベート・ミッションとして2026年に予定されるスターシップの火星着陸。無人ミッションだがヒト型ロボット「オプティマス」が搭乗する(c)SpaceX
スペースXのプライベート・ミッションとして2026年に予定されるスターシップの火星着陸。無人ミッションだがヒト型ロボット「オプティマス」が搭乗する(c)SpaceX

スターシップは2025年中にV2からV3にアップデートされようとしている。その最たる変更点はエンジンであり、現行のラプター2から「ラプター3」へと換装される。

ラプター3はその外観からもわかるように、これまでのエンジンとは構造がまったく異なる。3Dプリンターで製造された同エンジンでは、トラブルの発生源となり得る部位が徹底的にそぎ落とされ、過去の常識からは考えられないほど斬新な構造を持つ。この革新的なラプター3が想定どおりに運用できるか否かが、今後のスケジュールを大きく左右する。

極限まで簡素化された「ラプター3」(中央)。ラプター1(左)と現行のラプター2(右)と比較すれば、その先進性が理解できる(c)SpaceX
極限まで簡素化された「ラプター3」(中央)。ラプター1(左)と現行のラプター2(右)と比較すれば、その先進性が理解できる(c)SpaceX

次回のテストIFT 11は、これまでと同じラプター2を搭載したスターシップV2で実施されるが、その実施は9月下旬から10月中が見込まれる。そしてIFT12では、ラプター3を載せたV3が初めて打ち上げられる。マスク氏のポストによれば、その飛行は2025年中に行われる可能性がある。

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編集=安井克至

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