「最初はバイトとかけもちでやっていたので、ひとりじゃどうにもならなくなった時期があって。事務所に入りたいと思ってホロライブのオーディションを受けたんです。感触はすごく良かったんですけど、“落ちた”という連絡が来て。でも『お願いします、もう一回話し合わせてください』と返事をしたら、一週間後くらいに社長から直々に連絡が来た。その時、社内レーベルで音楽活動をしてほしいという話をいただいたので、そこからバーチャルアイドルとしての活動を本格化していきました」
星街がファンを増やせた要因のひとつは、卓越した歌唱力だった。しかし、その一方でVTuberの音楽活動に対しての根強い偏見も感じていた。
「初めから界隈自体が『オタクがハマるものでしょう?』みたいに見られていて。VTuberという肩書で歌っていますと言っても『キャラソンなんでしょう?』みたいに思われたり、アニメや漫画に興味のない層からはそれと同じように見られたりして。普通の音楽ととらえてもらえていないというのはずっと感じていました」
「ネットの中だけで生きてろ」と圧力も
21年には初のフルアルバム『Still Still Stellar』を発表した。星街自身が作詞を手がけた収録曲 「Stellar Stellar」が話題を呼び、リスナー層はVTuberファン以外にも広がった。偏見を覆したのはあくまで楽曲の力だった。
「『Stellar Stellar』によって(自分のなかで)開かれた扉はたくさんあったと思います。この曲には私の心情や経験が結構入っていて。もともと私、朝が嫌いで、夜がすごく好きなんです。例えば夏祭りとかクリスマスパーティとか、楽しいことってだいたい夜にあるじゃないですか。朝が来るとその楽しいことが終わっちゃう。『朝が来ないでずっと夜が続いたらいいのに』という気持ちが込められています」
「Stellar Stellar」は星街がバーチャルとリアルの垣根を越えて活動領域を広げるきっかけの曲にもなった。23年1月にはVTuberとして初めてYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に出演し、一発撮りでこの曲を歌った。16万人という同時接続者数を達成するなど大きな話題を呼んだ一方、風当たりも強かったという。
2021年に発表した初のフルアルバム『Still Still Stellar』の収録曲「Stellar Stellar」が話題を呼び、23年 には「THE FIRST TAKE」で披露した。
「インターネット発というのもあって『ネットのなかの好きな場所だけで生きてろ』みたいな圧力もありましたし、『なんで界隈を広げようとするの?』みたいな声も、『見たくない』という声すらもありました。そういう人たちに無理に好きになってもらおうと思っているわけではないのですが、私をまだ知らない人たちに、その圧力の壁を越えて届くにはどうしたらいいんだろうと思って。でも『Stellar Stellar』はすごくいい曲だから、これを聴いてもらえたら変な偏見もまっさらにできるんじゃないかという気持ちもありました」


