30U30

2025.09.12 15:30

超効率シミュレーターを開発 目指すは社会を支えるヒューマノイド(山﨑加周):30UNDER30

山﨑加周|AIロボット研究者

山﨑加周|AIロボット研究者

2025年8月25日発売のForbes JAPAN10月号は「30 UNDER 30」特集。30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで『Forbes JAPAN』では18年より開催し、7年間で総計300人を選出してきた。

今年も4つのカテゴリから30人を選出し、そのひとりがSCIENCE & SOCIAL部門で受賞した山﨑加周だ。


米カーネギーメロン大学を中心とする研究チームが2024年12月にオープンソースで公開した物理シミュレーター「Genesis(ジェネシス)」。その開発にコアメンバーとして携わった人物こそ山﨑である。

ジェネシスは、例えば「ビンの表面を流れ落ちる水滴」のような複雑な物理現象をコンピュータ上で再現し、現実世界の数十万倍もの効率でシミュレーションができる。このため、ロボットやAIの開発を加速度的に進められると期待される。あのNVIDIA(エヌビディア)も自社のシミュレーター開発の参考にするほどだ。

エンジニアの父親の影響で、幼少期は電子工作に夢中になった。映画『アイ, ロボット』、アニメ『攻殻機動隊』などのSF作品にも魅了され、いつしかヒューマノイド(人型ロボット)の開発を夢見るようになった。

高校卒業後は米アーカンソー大学に進学し、機械工学とコンピュータサイエンスを学ぶ。23年、客員研究員として、AIやロボット工学で世界屈指の研究力を誇るカーネギーメロン大学の門をたたき、24年より同大学の博士課程で最先端の研究に従事している。

今、山﨑が目指すのは、GPT-4のような大規模視覚言語モデル(VLM)に、「身体性」をもたせたVLA(Vision Language Action model)の開発だ。

将来的にはVLAを人型ロボに搭載することで、さまざまな環境で人と同じような複雑な作業ができるようになると期待されている。ジェネシスは、このVLAの開発に欠かせないツールだと彼は考える。 

「日本のような人口減少社会でも、ヒューマノイドによって持続的で安定した社会基盤を構築できるはず」。夢の実現に向け、大きな一歩を踏み出した。

世界を変えうる30歳未満にフォーカスする企画「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」、8年目となる今年は30人を選出。これからの未来をつくる彼ら・彼女らが描く「希望」と「新しい未来」へ、ようこそ!

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やまざき・かしゅう◎1998年生まれ。高校卒業後に渡米。2023年、米アーカンソー大学修士課程修了。24年、米カーネギーメロン大学博士課程に進学。物理シミュレーター「Genesis」の開発に携わり、同年12月にリリース。

文=中居広起 写真=長谷川ゆり

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「30 UNDER 30」2025

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