欧州

2025.09.05 13:30

従業員わずか10人、英GPUクラウド新興が仏1.7兆円AIインフラを受注

フランスのエマニュエル・マクロン大統領(Photo by Leon Neal/Getty Images)

フランスのエマニュエル・マクロン大統領(Photo by Leon Neal/Getty Images)

英国の小さなスタートアップFluidstack(フルーイッドスタック)は、メタをはじめ、人工知能(AI)スタートアップのMistral、Black Forest Labs、CognitionにGPUアクセスを提供した。その結果、収益は6600万ドル(約980億円、1ドル=148円換算)に急拡大した。同社は今、フランスで116億ドル(約1.7兆円)規模の「AIファクトリー」を建設するための契約を獲得した。

パリAIサミットでマクロンと契約、1ギガワット級スーパーコンピューターを受注

2月にパリで開かれたAIサミットには、各国のリーダーや投資家、大手テック企業の幹部が集まった。そこには、ほとんど無名の英国スタートアップの2人の共同創業者の姿もあった。FluidstackのCEOのギャリー・ウーと、社長のセザール・マクラリーだ。彼らはテック界の大物の講演を聞いたりネットワーク作りをしたりするためだけに、このイベントに参加したのではなく、フランスのエマニュエル・マクロン大統領との契約に署名するために会場を訪れていた。

マクロン大統領は、1ギガワット規模のAIスーパーコンピューター建設計画を、ロンドン拠点のFluidstackに委託した。このスタートアップは当時、公表していた資金調達額がわずか450万ドル(約7億円)だった。このスーパーコンピューターは、来年にもフランス政府の原子力ネットワークに接続される予定だ。

フランス政府が、従業員わずか10人(昨年時点)のスタートアップと116億ドル(約1.7兆円)規模のインフラ契約を結ぶのは異例だ。このデータセンターは原子力発電で稼働し、AIモデルの学習・運用に使われる50万基以上のチップを収容する。完成すれば、イーロン・マスクのxAIが米メンフィスで進めるプロジェクトに匹敵する、欧州最大級の「AIファクトリー」となる。

欧州最大級のAIファクトリー構想、総予算6.8兆円超で立地協議中

Fluidstackのマクラリー社長は6月、フランスのテレビ局BFMのインタビューに応じ、このデータセンターの総予算が「1ギガワット規模のキャンパス全体で460億ドル(約6.8兆円)を超える可能性がある」と語った。ただし、建設地は依然として協議中だと明かした。

Fluidstackの契約は、マクロン大統領が2月のサミットで発表した1130億ドル(約16.7兆円)規模のAIインフラの投資パッケージの一部にすぎない。このプロジェクトには、カナダの年金基金ブルックフィールドやフランスの国営投資銀行BPIフランス、そして1000億ドル(約14.8兆円)規模のAIファンドを運用するアラブ首長国連邦のMGXが、いずれも数十億ドル(数百億円)単位の出資を表明した。

次ページ > 「遊休GPUのマーケットプレイス」から売上98億円へ急成長、しかし収益は赤字に

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事