2025年8月25日発売のForbes JAPAN10月号は「30 UNDER 30」特集。30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで、米『Forbes』が11年より開催し、世界的に注力している企画だ。北米版のほか、欧州版、アジア版、アフリカ版など81カ国・地域を対象に開催し、世界規模へと成長している。『Forbes JAPAN』でも18年より開催し、7年間で総計300人を選出してきた。これまでの受賞者は、ロサンゼルス・ドジャースで活躍する大谷翔平、ボクシング世界4階級制覇王者の井上尚弥、世界的ピアニストの反田恭平、起業家の坪井俊輔(サグリ)など、世界を舞台に活躍するチェンジメーカーたちだ。気候変動、地政学的緊張、デジタル格差など世界的課題があるなかで、今年の受賞者たちも各々が「自分が思うより良い未来」を目指す30人だ。彼ら彼女らが想像し創造していく「新しい社会、新しい経済」から見えてくるものこそが日本の未来の希望になる。
嘉名雅俊が手がける「トリファ」は、世界200以上の国や地域で簡単にインターネットを利用できる海外eSIMアプリだ。2020年に起業し、コロナ明けの2年間で売り上げは15倍に成長。対応地域の多さや優れたUI/UXから、現在国内のeSIMアプリとしてダウンロード数ナンバーワンとなっている。
起業のきっかけは学生時代のベトナムでのインターン。現地のスタートアップコミュニティとかかわる機会があり、大きな野心をもった高校生や大学生を目の当たりにしたという。「自分より年下の人たちが『ITの力でベトナムを変えたい』と語っているのを見て心が熱くなった」。嘉名は帰国後3年間プログラミングを学んだのち、自身の海外での体験に立ち返りeSIMサービスの事業化を決意した。
トリファのアプリはオフライン状態で開いても設定方法を案内できるようになっていることが特徴のひとつ。自らエンジニアとしてのスキルを磨いたことが、「とことんユーザーに寄り添ったUI/UX」という強みにつながった。
昨年10月には、ANAホールディングスやグローバル・ブレインなどから総額12億円の資金調達を実施。すでに事業展開を始めた台湾のほか、韓国、香港などアジア圏にもアプローチし、グローバル展開していく見通しだ。
「トリップのインフラ」という社名由来のとおり、将来的には決済・保険・旅行予約など、旅行にかかわるあらゆる機能を実装していきたいと語る。「トリファとパスポートさえあれば世界中を自由に旅行できる未来を目指します」。
かな・まさとし◎1995年、石川県生まれ。学生時代にベトナムのSun Asteriskでインターンを経験し、帰国後ZEALSにエンジニアインターンとしてジョイン。PM・海外開発拠点責任者を経て、20年にトリファを創業。25年7月には上白石萌音さんを起用したテレビCMを放映。




