北米

2025.09.05 08:00

静かな革命、米宇宙軍が近く画期的な衛星を打ち上げる 中国の脅威に対抗

Mehaniq / Shutterstock.com

Mehaniq / Shutterstock.com

軍事宇宙分野で、ひっそりと、だが大胆さと規模の両面で前例のない変革が進行中だ。量産型でアップグレード可能な小型衛星群が米国の宇宙戦力を再定義しようとしており、その本格的な打ち上げが迫っている。

「拡散型戦闘宇宙アーキテクチャ(PWSA)」と呼ぶ能力の構築を進める米宇宙軍の宇宙開発局(SDA)は、PWSAを構成する衛星コンステレーション層のひとつ「トランスポート(データ伝送)・レイヤー」の第1フェーズの通信衛星126基のうち、最初の21基を来週にも打ち上げる予定だ。向こう数年でさらに1000基以上の衛星打ち上げを計画している。

これらの衛星は、ほぼすべて市販部品を用いてつくられている。これは、つい15年ほど前に米空軍が進めていた特注設計の巨大な静止軌道プラットフォーム「TSAT」とまったく異なるアプローチだ。PWSAの各衛星は、iPhoneのようにソフトウェアの更新や新しいアプリを定期的に受け取ることができるうえに、コンステレーション全体では、生産に至らなかったTSATよりも帯域幅(データ伝送容量)が大きく、処理能力も高い。一方、価格は桁外れに低く、TSATの衛星のたった1%程度だ。この高性能にして低価格な新型衛星がまもなく軌道上に投入され始める。

稼働を開始すれば、これら最初の衛星(と続いて配備される100基あまり)は米国にとって、これまでよりも格段に機敏で安価かつ拡張性に富む、宇宙戦への新たなアプローチの運用の始まりを意味する。

1期目のドナルド・トランプ米大統領による「迅速に行動せよ」という指示を受けて2019年にSDAが発足するまで、米軍の新たな衛星プログラムはきまって予測可能なパターンをたどっていた。先行するプログラムよりも大型で高額になり、多くの場合、遅滞したり中止に追い込まれたりする、というものだ。米空軍、のちには米宇宙軍も、高度にカスタマイズされた十億ドル単位規模のシステムの設計や配備を指示し、それらを1基ずつロケットで打ち上げるというのが通例だった。そのロケット自体にも数億ドルかかった。

だが、6年前にSDAが設立されると状況が大きく変わり始めた。SDAはたんに既存の空軍司令部を改称した組織ではなく、きわめて重要な問いに答えるために創設されたまったく新しい機関だ。「米軍は作戦上の実際のニーズを満たすために、商用グレードの小型衛星を大量に取得できるか」という問いである。

次ページ > 宇宙での中国の脅威に対する強靭性を高める

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事