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2025.09.04 17:00

グーグルへの「制裁回避で急騰」したアルファベット株、買わなくていい理由

bluestork / Shutterstock.com

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グーグルの親会社アルファベットの株価は米国時間9月3日午後に一時約9%上昇した。この株価の上昇は、コロンビア特別区連邦地裁のアミット・メータ判事が同社の独占禁止法(シャーマン法)第2条の違反を認定したものの、予想より軽い制裁にとどめたことを背景としている。この判決でグーグルは、一般検索サービスと検索連動型広告市場において違法に独占を維持していたと判断された。

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ただしメータ判事の決定は、投資家が警戒していたChromeブラウザの分離や売却を命じるものではなかった。今回の反トラスト法(独占禁止法)違反をめぐる裁判でグーグルに不利な証言をしていた検索エンジンサービスを提供するグーグルの競合、DuckDuckGoのガブリエル・ワインバーグCEOは、ニューヨーク・タイムズに対し「まったくの肩透かしだ」と語った。

グーグルにとっての好材料は、検索大手の同社がChromeブラウザの分離を避けられたことと、同社が今後もアップルにトラフィック獲得費用を支払って、アップルのデバイス上でChromeをデフォルトに設定できる点だ。この支払いはアップルなどの他社に年間260億ドル(約3兆8500億円)規模の恩恵を与えている。

一方でこの判断は、グーグルに競合他社との検索データの共有を義務付けている。ただし、筆者はグーグルがメータ判事の決定を不服として上訴し、できる限り先延ばしを図ると考えている。つまり、大きな変化はすぐには起きない可能性が高い。

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グーグルは判事の決定を歓迎したが、懸念も表明した。グーグルの規制担当バイスプレジデントのリー・アン・マルホランドはNPR(米国公共ラジオ放送)が引用したブログの投稿で、Chromeが「訴訟の焦点である検索エンジンの配布形態を超えて、消費者やパートナーに害を及ぼしかねないものだった」と主張した。

ただし、マルホランドは「裁判所の命令を精査している」としたうえで、検索データの競合との共有が「利用者とそのプライバシーに影響を与える」と懸念を表明した。筆者がここで懸念するのは、2017年にChatGPTの技術の基盤となるトランスフォーマー論文を発表したグーグルが、急成長するライバルと戦う上で、会社のカルチャーに巨大な障壁を抱えている点だ。

アルファベットの株価は、ウォール街の目標株価を上回っているが、筆者は同社に投資する明確な理由を見いだせないでいる。

この判断の恩恵を受けるのは誰か

グーグルの株主は安堵している。連邦判事が同社の独占禁止法違反に、最も厳しい制裁である分割を科さなかったためだ。

メータ判事はChromeの分離命令を出さなかった理由について、「裁判所の役割は、独占状態が反競争的行為によって維持されているのか、それとも優れた製品や経営手腕、あるいは偶然の結果として成長や発展が維持されているのかを見極めることにある」と判決で述べた。

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編集=上田裕資

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