政治

2025.09.04 11:30

中露主導の上海協力機構は「反米クラブ」、米国は看過すべきではない

中国・天津で開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左)を歓迎する中国の習近平国家主席。2025年9月1日撮影(Suo Takekuma - Pool/Getty Images)

中国・天津で開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(左)を歓迎する中国の習近平国家主席。2025年9月1日撮影(Suo Takekuma - Pool/Getty Images)

恐らく米国人の大半は、上海協力機構(SCO)について聞いたことがないだろう。だが、世界人口の42%がこの「反米クラブ」に加盟している。8月31日~9月1日にかけて中国・天津で開催されたSCOの首脳会議に先立ち、同国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は米国を主要な同盟国から分断させようと、反米論を練り上げてきた。

中国とロシアは、SCOを外交的・軍事的役割を担うものとして位置付け、これまで米国が主導してきた他の国際機関に対抗しようとしている。習主席とプーチン大統領は同機構の首脳会議を利用し、一貫した虚構を語ってきた。それは、米国とその同盟国は、太平洋、仮想空間、そして宇宙空間を「軍事化」しているというものだ。米国は、世界人口の42%の支持を失うわけにはいかない。中露の危険な情報戦とローフェア(法を悪用した戦争)に対抗するため、米国は行動を起こさねばならない。

SCOを利用して反米論を展開する中国

SCOは1996年、中国とロシアを含む5カ国が集まった「上海ファイブ」として発足した。これが安全保障協力機構として現在の形態となったのは、2001年だ。現在の加盟国は、中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタン、イラン、ベラルーシの10カ国に及んでおり、ミャンマーも同機構への関心を示している。北大西洋条約機構(NATO)の加盟国であるトルコも、今回のSCO首脳会議に参加した。

SCO首脳会議は、中国の外交力とロシアとの連携を強調し、NATOをはじめとする米国主導の同盟に対する対抗勢力としての立場を確立する場として活用されている。習主席は首脳会議の冒頭で、世界的な不確実性を踏まえ、SCOが地域の平和と繁栄に対して「より大きな責任」を負うと位置付け、同機構の権限強化に向けた枠組みを示した。

中国とロシアはともに、日本が最近、防衛予算を増額したことや、米国が同盟国との軍事協力を強化していることを非難している。中国国営新華社通信の取材に応じたプーチン大統領は、「ロシアや中国の仮想の脅威を口実に、日本の軍国主義が復活しつつある」との持論を展開した。

こうした手当たり次第の批判は、サイバー空間や宇宙空間を含む米国との軍事的緊張の中で、中国とロシアが展開してきた主張を反映している。中国とロシアは、サイバー空間での国家の責任ある行動に向けた米国主導の国際的な取り組みに対抗する形で、独自の国連作業部会を立ち上げた。こうした国連の場で、米国がサイバー空間での作戦は戦争法に従うべきだと主張するたびに、中国は米国がサイバー空間を軍事化していると繰り返し非難している。中国とロシアはまた、米国が宇宙を軍事化しようとしているとして、「宇宙空間における軍拡競争の防止」に関する条約の推進でも連携している。プーチン大統領はかねてより、ウクライナ侵攻の原因はNATOの拡大にあると主張しており、中国とロシアはSCOでこの持論を擁護している。

中国は自らの主張を広める態勢を整えている。同国は世界中のメディアの提携関係と「デジタルシルクロード」構想(訳注:「一帯一路」の一環として、中国主導の下、諸外国でデジタル化を推進する構想)を活用することで、外国での報道内容と世論を構築している。

次ページ > 中露とのローフェアや情報戦への対応で後れを取る米国

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事