なぜ今、分散型AIなのか
AIは、歴史上のいかなる技術よりも急速な拡大を遂げている。しかし最も強力なAIシステムは、データや計算資源、流通を支配するごく一部の企業によって所有されており、彼らがルールを決定することで、不平等な構造が生まれている。
だが、その状況は変わりつつある。世界経済フォーラムは、分散型AIを含む分散型物理インフラネットワーク(DePIN)市場が、現在の500億ドル(約7兆4000億円)から2028年までに3.5兆ドル(約518兆円)へ拡大すると予測している。そのメリットは明白だ。コスト削減や透明性の向上に加え、特に医療や金融などの機密性の高い分野において、より安定かつ信頼性の高い運用が可能になる。
このモデルの有効性は、既に複数のスタートアップによって実証されつつある。例えばFlower(フラワー)やVana(ヴァナ)といった企業は、分散型ネットワークを活用して大規模言語モデル(LLM)の訓練を行っている。このネットワークはピアツーピア構造に似ており、参加者は中央集権的なデータセンターを経由せずに直接やり取りできる。また、分散型コンピューティングを提供する企業Exabits(エクサビット)は、この仕組みによりAI運用コストを最大50%削減できるとし、小規模スタートアップでもOpenAIやグーグルといった巨大企業と競争可能になると主張している。
ガイアラボが取り組む構造的課題
ライトたちにとって転機となったのは、カリフォルニア大学バークレー校の教授が自身の研究データにAIエージェントを導入しようとしたときだった。高度な専門知識を持つ教授でさえ、クラウドプロバイダーに所有権を委ねざるを得ず、コントロールと可視性の両方を失うことになったのだ。
病院も同様の課題に直面している。機密性の高い患者データを活用して診断モデルを訓練する上で、これまではコントロール権を放棄するか、導入自体を断念するかの二択を迫られてきた。これに対し、ガイアラボは新たな選択肢を提示する。病院自身がエージェントを立ち上げ、データとモデルの完全な所有権を保持したまま、他で活用された際には収益を得られる仕組みを提供している。
ガイアネットには、モデルの利用状況を追跡し、報酬を自動配分する機能を組み込んでいる。それによって、貢献者が自身のデータや計算リソースの活用状況を正確に把握できるようにするとともに、報酬を受け取れることを保証している。


