大規模災害時にどう立ち回るべきか。お医者さんはその重大な責任を自覚して心構えをしているが、医師と言えども人間だ。プレッシャーは計り知れず、本人や家族が被災することも多い。そんな医師の苦悩に関する調査を通じて、医師の生の声、そして私たち一般人への医療現場からの貴重なアドバイスが聞かれた。
医療従事者のキャリア支援などを展開するエムステージは、同社が運営する「Dr.転職なび」と「Dr.アルなび」に登録している医師のうち638人を対象に防災に関するアンケート調査を行った。

それによると、災害に対して医師としてもっとも重要と思われる備えの1位は、半数以上の医師が答えた「初期対応マニュアルの把握」だった。続いて「情報伝達手段の確保」、「患者のトリアージや搬送の判断力」、「現場の安全確保とリスク回避行動」となった。自分や家族の安全確保、自分の健康維持など、自分のことは後回しだ。
だが災害時に感じるプレッシャーを尋ねると、「出勤要請と家族・大切な人の安全確保の板挟み」という家族への思いがトップに立った。家族よりも患者を優先しなければならない医師の辛さがわかる。2位は「医療資源が不足した際の判断責任」、3位は「他職種スタッフへの指示・統率責任」と責任への重圧の大きさも伝わってくる。

家族に関しては、こんな体験も聞かれた。
「患者の救急対応の後、やっとの思いで帰宅すると、破壊された屋内に怯えきって疲弊した妻と息子が肩を寄せ合って座っていた」
また医療資源に関連しては「医療がインフラにいかに依存しているか思い知った」という声も聞かれた。洪水でコンプレッサーが止まり、蘇生バッグを押し続けたという医師もいた。
責任に関する体験には「被災してクリニックを閉めようと考えたが、徒歩2時間掛けて薬を取りに来た患者さんがいて、職場を守る意義を感じた」という話もあった。
そうした現場の医師に、医療を受ける側は災害にどう備えるべきかを聞くと、次のアドバイスが得られた。災害時の医師の医療活動を助けるためにも、覚えておくといい。
・持病のある人はかかりつけ医のほかに対応可能な病院を把握しておく。
・どこでも一定の医療が受けられるよう持病を把握しお薬手帳を携帯する。
・医療支援マップやハザードマップは紙とデジタル両方で準備しておく。
・常備薬または持病の薬を1週間分程度を用意しておく。
・緊急時の家族の連絡方法を決めておく。
・最低限の応急処置の方法は学んでおく。
・家族の分も含め、持病や内服薬を把握しておく。



