無限労働日と996労働週からの脱却
では、どうすれば無限労働日と996労働週から抜け出し、平日の夜や週末、そして心の平穏を取り戻せるのだろうか。職場の生産性専門家でありNotta.ai(ノッタ・エーアイ)のCEOであるライアン・ジャンは「24時間いつでも連絡が取れるからといって、常にそうあるべきだという意味にはなりません」と断言する。
現在「liquid workforce(リキッド・ワークフォース、デジタル時代に適応した流動的で柔軟な新しい労働力のモデル)」という対抗運動が、職場のウェルネスを再定義しつつある。それは、仕事を守るために心身の健康を危険にさらし、燃え尽き、人生を犠牲にすることが名誉なことだという集団的な思い込みを改めることから始まる。ジョルダーノ、デュリス、ジャンという3人の専門家が、無限労働日と996労働週から抜け出し、燃え尽き症候群を防ぎ、ワークライフバランスを改善するためのヒントを共有している。
1. 法的な権利を知る
弁護士のジョルダーノは、とりわけ残業に関して自分の権利を把握することが不可欠だと強調する。週72時間労働は、「残業代支給対象の従業員」(non-exempt employee)に対して週40時間を超える全労働時間への支払いを義務付ける現行の時間外労働法に真っ向から抵触する、とジョルダーノは論じている。
「私は組織労働の強い支持者として、会社からの期待が不当もしくは持続不可能だと感じる労働者には、集団で組織化することを勧めたいです。そして、もし996モデルが導入されるなら、従業員は人事部や経営陣を通じて健康・安全上の懸念を速やかに提起すべきです」と断言する。
2. 明確な境界線を設定する
「無限労働日は時間管理の問題ではなく、境界線の問題です。すべてが緊急だと感じられるなら、実際には何も緊急ではないのです。私たちは戦略的である代わりに反応的であるように自らを訓練してしまい、その代償をメンタルヘルスで支払っています。会議とメッセージに溺れている企業は生産性が高いのではなく、ただ疲弊しているだけです」とジャンは断言する。
デュリスも、過労による燃え尽きを避けるために明確な境界線を設定するよう勧める。これには、定時でログオフする、契約時間内のみ働く、勤務時間外の仕事のメールに返信しない、といったことが含まれる。残業が常に悪いわけではないと彼は説明する。しかし、スケジュールがすでに多忙を極めている場合は、燃え尽きを防ぐために仕事と私生活の間に明確な境界線を保つことを推奨する。
ジャンは、考えすぎないようにするなど、精神的な境界線を設定することも強く勧める。「メールは完璧である必要はありません。そのプレゼンテーションに、さらに5つの修正を加える必要もないのです。無限労働日は完璧主義によって助長されます。時には、『これで十分』で本当に十分なこともあり、わずかな改善よりも夜の心の平穏の方が価値があるのです」。
また、ジャンは仕事を持ち込まない「ワークフリー・ゾーン」を設けることを勧める。「自宅の中に、ノートPCも仕事の電話もメールチェックもない、仕事が存在しない特定の空間を指定するのです。寝室、ダイニングテーブル、あるいはリビングルームが、心を真に解放できる聖域となります」と彼は提案する。


