ベッドから起き上がる前からメールを確認し、夜10時になってもメッセージに返信している。日曜の夕方には、月曜の混乱に先回りしようとして、すでに受信トレイをチェックしている。心当たりがあるだろうか。こうした24時間365日のパターンは「無限労働日」(infinite workday)と呼ばれる。これに、朝9時から夜9時まで週6日働く「996労働週」(9-9-6 workweek)の勤務形態が加わり、現代の週72時間勤務は境目のないものとなりつつある。しかし、専門家は無限労働日と996労働週から抜け出す方法はあると断言する。
無限労働日と996労働週
米国では、AI競争で中国に勝つため、企業に996労働週の採用を促す声が高まっている。早朝のメール確認から深夜の会議、さらには週末まで続く週72時間労働は、持続不可能なワークライフバランスを生み出す。そしてそれは、仕事のストレスや燃え尽き症候群、さらには過労死(karoshi)のリスクを高める確実な要因となる。
マイクロソフトの『2025 Work Trend Index Annual Report(ワーク・トレンド・インデックス年次報告書)』のデータは、無限労働日が従業員の時間をいかに独占し、私生活の余地をほとんど残していないかをすでに示している。
・従業員の40%は午前6時までに起床してメールをチェックしており、午後10時になると29%が再び受信トレイを確認をしている
・従業員の20%は週末にも積極的にメールをチェックしており、その多くは土曜と日曜の正午前である
・勤務時間外のメッセージは前年比で15%増加し、従業員は現在、業務時間外に平均58件のメッセージを受け取っている
・従業員の3人に1人が、仕事のペースについていくのが不可能になったと回答している
競争力を維持するために米国のテック企業に中国式のスケジュールを導入する動きが広がるなか、専門家は深刻な健康リスクにつながり得ると警鐘を鳴らしている。筆者は、Kickresume(キックレジュメ)のCEOで共同創業者であるピーター・デュリスに話を聞いた。デュリスによれば、最近の自社の調査では、求職者にとってワークライフバランスが最優先事項であり、世代によっては報酬よりも重視されることが示されたという。
「多忙な72時間労働週は、繁栄するビジネスに必要というわけではありません。むしろ、従業員のウェルビーイングを優先することこそが、人々が本当に懸命に働き、最善を尽くし、長期的にチームにとどまりたいと思える、成功した職場の秘訣かもしれません」とデュリスは主張する。
また、Pond Lehocky Giordano(ポンド・レホッキー・ジョルダーノ)法律事務所の創設パートナーであるトム・ジョルダーノにも話を聞いた。同氏は、認識すべき現実の法務上および職場文化上のリスクがあると指摘した。弁護士である同氏は、労働時間が長引けば燃え尽き症候群が不可避的に加速するとして、健康リスクを挙げた。さらに、研究では労働時間の延長に伴い事故率が急増することも指摘している。加えて、特定の職種では身体的健康への負担や労働災害の可能性も高まる。



