アジア

2025.09.03 09:00

日本の誤算 米国との関税合意が漂流、トランプの「無限ゆすり沼」にはまる懸念

握手するドナルド・トランプ米大統領(左)と赤沢亮正経済再生担当相=ホワイトハウスがX(旧ツイッター)に投稿した写真から

握手するドナルド・トランプ米大統領(左)と赤沢亮正経済再生担当相=ホワイトハウスがX(旧ツイッター)に投稿した写真から

世界の政策当局者で2025年の仕事のわずらわしさに辟易している人は、日本の赤沢亮正経済再生担当相のことを思い起こすといいだろう。

米国との関税交渉で日本側の交渉役に抜擢された赤沢はこの数カ月、ドナルド・トランプ米大統領による要求への対応や、彼の部下である予測しがたいカウンターパートたちとの交渉に忙殺されてきた。64歳の赤沢は米国側との協議のため、平日や週末、ときには祝日も費やして東京とワシントンを何度も往復した。その回数は多すぎて本人も彼のチームも覚えていないかもしれない。

ともあれ、その甲斐あって7月22日(米国時間)、やっとシャンパンを開けられる時を迎えた。世界1位と3位の経済大国の間で、6年ぶりの2国間貿易合意が成立したのだった。ところが、それから1カ月以上たったいまも、合意は宙に浮いたままになっている。どんなに祝杯をあげようとも、中身が固まりきっていないのだ。

日本と米国の「ディール(取引)」は、トランプの国に入る日本製品に対する15%の関税をめぐる曖昧な枠組みにすぎなかった。具体的な内容に乏しければ、文書も作成されておらず、明確なルールや実施方法もない。あったのはプレスリリースだけだ。

合意の発表時、赤沢と上司の石破茂首相は結果に満足していた。15%という関税率は痛みを伴うものだとはいえ、トランプが脅していた35%に比べればずっと低い。自動車に対する関税率も15%とされ、これも以前の25%に比べれば日本の自動車メーカーにとってはるかにマシだ。また、文書化されていない以上、拘束力がなく口約束にすぎないようなこの合意を、米政府が日本政府に守らせる手立てがあるだろうか。

しかし事態が長引くにつれて、日本側は、トランプが石破の自由民主党政権にまた揺さぶりをかけてくるのではないかとの懸念を募らせている。

たとえば、トランプは米国の大手自動車メーカーから批判を浴びている。現状では、米国の自動車メーカーはカナダやメキシコから輸入する完成車や部品に対して、日本企業よりも高い関税をかけられているからだ。こうした状況はいつまで続くだろうか?

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翻訳・編集=江戸伸禎

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