経営・戦略

2025.09.03 10:30

米小売ターゲット「DEI撤廃で信頼失墜」 CEO退任、市場価値65%減少の大きな代償

Kristi Blokhin / Shutterstock.com

また、ターゲットの実店舗とオンライン店舗には、黒人の所有するブランドや黒人が創業したブランドが50を超えて並んでいると自賛し、こうした取り組みをもっと強化したい、とも語っていた。

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その結果、2021年には既存店売上が12.7%増加し、2020年の記録的な成長を上回った。会社もブランドも成長し、ターゲットの市場価値は1290億ドル(約19兆1000億円)まで高騰した。

多様性、平等性、包摂性を取り巻く広い市場機会を積極的に取りこむ戦略、コミュニケーション、変化が、同社を変えていたことは明らかだ。DEIは、ビジネスにとって大きなプラスになっていたのだ。

DEIは、ターゲットにとって極めてうまく機能していた。その証拠にコーネルのCEO契約は、2022年9月の取締役会で3年間延長された。当時、コーネルは66歳で、最高経営責任者の定年を65歳とするターゲットのポリシーをすり抜けるかたちだった。

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DEI撤廃がターゲットのビジネスと価値を傾け、CEOを失職させた

2025年はじめ、ターゲットがDEIプログラムの縮小を明らかにした直後から、問題が次々と浮上し始めた。2月には、ターゲットが近年取りこもうとしてきた消費者層で反発が起きた。3月には、売上が「減少傾向」と報じられた。

そして、その下降の機運をつくったのが、ジョージア州アトランタの著名牧師であるジャーマル・ブライアントが立ち上げた「TargetFast.org」だ。この運動は、「ターゲットは我々のコミュニティに背を向けた」と主張し、10万人の良心的な市民に向けて、3月5日から4月20日(復活祭にあたる日曜日)までの受難節のあいだはターゲットでの出費を断つ(fast)ことを呼びかけた。

目標を超える20万人が、その呼びかけに応えて参加した。名前こそ違うが、これはボイコット運動だった。

それをきっかけに「LatinoFreeze.com」が登場し、同様のメッセージをラテン系コミュニティに発信した。電話の位置情報を使って来店数を調べている「Placer.ai」のデータによれば、ボイコットが始まった週にターゲット店舗の客足は、前年比で6.8%減少したという。このタイミングは、40日間の「ターゲット断ち」と一致している。

消費者のほか、ターゲット共同創業者の家族も、率直な意見を表明し、最近の決定に懸念を抱いている、とロサンゼルス・タイムズに話した。元CEO故ブルース・デイトンの娘であるアン・デイトンとルーシー・デイトンは、「企業が、倫理面やビジネス面で重要とみなす規範にもとづいてビジネスモデルを構築するのは『違法』ではありません」と述べた。

さらにネット上では、2010年から存在しているターゲットのサブレディット(掲示板Reddit[レディット]のコミュニティ)で、同社の従業員も不満を表明した(このサブレディットについては、ターゲットは提携も公認もしていない点に注意が必要だ)。

その時点で、市場も目を向け始めた。ターゲットの株価は24%下落した。ターゲットがDEIプログラム縮小を発表した1月24日時点で137.40ドルだった株価は、3月15日には104.70ドルになっていた。

おまけに、フロリダ州リビエラビーチ市の警察年金基金が、ターゲットと、同社CEOおよび取締役を相手どって集団訴訟を起こした。DEI、環境、社会、ガバナンスをめぐる取り組みの財務的リスクに関して、投資家をミスリードしたというのがその理由だ。原告団の訴えによれば、ターゲットは、方針転換から生じる消費者の反発やボイコット運動の危険性を軽視したという。

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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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