米小売大手の「Target(ターゲット)」は米国時間8月20日、ブライアン・コーネルCEOが2026年2月に退任すると発表した。その際に出た話題のほとんどは、同社の売上減少に関するもので、客足の減少や19%の減益がそれを際立たせていた。
そうした要素はどれも事実ではあるが、どちらかといえば「何が起きたのか」を表すものであり、「なぜそれが起きたのか」という、もっと深い様相を示すものではない。
全米の多くの顧客に愛されてきたターゲットは、楽しくて包摂的、かつ現代的な小売事業者として成長してきた。商品の多くは必需品とは見なされないかもしれないが、それでも、客が買い物をしに訪れるのを楽しみにする場所であることを売りにしてきた。
だが、2025年1月に下したある戦略的決定が、長年にわたって積み重ねてきた投資、ブランドに対する信頼、確立された評価、顧客ロイヤルティを台無しにしたようだ。
ターゲットはこのとき、多様性・公平性・包摂性(DEI)方針を撤回すると発表したのだ。
同社はDEIプログラムを完了、縮小、停止、あるいは進化させると述べたが、消費者の意見は違っていた。
DEIを基礎に成長してきたターゲットの変節
2025年はじめにホワイトハウスに返り咲いたドナルド・トランプ大統領は、就任からまもない1月21日、「違法な差別の根絶と、実力主義の機会の回復」と題する大統領令を発令した。
この大統領令の中でトランプ大統領は、公共・民間セクターにおけるDEIの取り組みに触れ、「危険で屈辱的、かつ非道徳的なもの」と表現した。同氏はそうした取り組みについて、「歴史の長い連邦公民権法の文言および精神に違反」するものだと述べた上で、DEIプログラムは「違法で腐敗した悪質なアイデンティティにもとづく猟官制(スポイルズシステム:公職の任命を政治的背景に基づいて行うこと)に味方し、勤勉さ、卓越性、個人の成果といった伝統的な米国の価値観を否定し、信用を失墜させ、傷つけることで、国家の一体性を損なうものである」と続けた。
3日後の1月24日、ターゲットは、従業員向けの社内連絡メモの中で、自社のDEIプログラムを縮小すると通告した。ターゲットの社会貢献・平等担当最高責任者を務めるキエラ・フェルナンデスは、従業員に向けてこう書いた。「長年にわたるデータ、洞察、聞き取り、学習を通じて、当社戦略の次なる章がかたちづくられてきました」
「毎日、数百万人のお客さまにサービスを提供する小売事業者として、現在においても将来においても、変化する外部環境と歩調を合わせる重要性を当社は理解しています。そのすべてが、ターゲットの成長を促進し、一丸となった勝利を後押しするのです」とフェルナンデスはメモのなかで述べた。
ほんの4年前にはコーネルCEOが、ブランドとしてもっとすべきことがあると声高に訴えつつ、以下のように述べていた。ターゲットの本拠でもあるミネソタ州で、黒人男性ジョージ・フロイドが白人警官に殺害された後のことだ。
「いまこそ次の段階へ進むべき時であり、CEOの立場にいる我々は、会社の先頭に立って多様性と包摂性を主導しなければならないと、私は認識している」とコーネルCEOは述べた。「変化を押し進めるロールモデルとならなければいけない。我々の声は重要だ。チームにとって重要な問題に関して、会社の理念、価値観、目的を体現しなければならない」
コーネルCEOは、黒人の従業員を20%増やすと約束し、20億ドル(約2970億円)超を、黒人の所有する企業に投じると言明した。起業を応援する「ターゲット・アクセラレーターズ(Target Accelerators)」をベースにしたプログラム「フォワード・ファウンダーズ(Forward Founders)」の構築を通じて、黒人の起業家が率いる初期段階のスタートアップの製品開発、試験、拡張を後押しし、いつの日かそうした製品をターゲットに並べられるように支援する、と述べていた。



