経済

2025.09.10 09:30

スカート丈、衛星画像、ビッグマックの価格 「経済動向をつかむ」11の代替指標

T. Schneider / Shutterstock.com

代替指標を支持するのは、変わり者や、政府に不信感を抱く人々だけではない。18年間にわたって連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めた経済学者アラン・グリーンスパンにも、お気に入りの指標がある。公式データよりも早く景気の後退や回復を予測できると彼が信じている指標とは「男性下着の売上」だ。

advertisement

代替指標はより取り見取りだ。民間企業の賃金統計や、消費者物価を捕捉するデータのように、わかりやすいものがある一方で、スカート丈、口紅の売上、質屋の繁盛といった風変わりなものもある。いずれも完璧ではないし、公式データが信用できない場合、検証は難しい。それでも、状況分析には役に立つ。アントニー新局長が以前にほのめかした通り、月次雇用統計の発表が停止されるとしたらなおさらだ。

公式統計の発表が遅れるとしたら、こうした代替指標から概況をつかむことになるかもしれない。公式データと変わり種の指標が連動しているなら、政府統計にはある程度の真実が含まれていると言えるだろう。

ただし、非常に単純明快な指標であっても、信じるにはしっかりした根拠が必要であり、そのせいで難しい状況が生じる。代替指標が当てになるのは、信頼できる基準と照らし合わせて齟齬がないときだけだ。

advertisement

ペンシルベニア州立大学の経済学者、ラン・ショーラー准教授によれば、公式統計の大きな強みは、「年単位で比較可能な唯一のデータ」であることだ。代替指標にはこうした過去の参照点がないため、状況が変化した場合に指標として機能するかどうかの判断が難しい。

カリフォルニア大学バークレー校のグローバル・オポチュニティー・ラボ、およびセンター・フォー・エフェクティブ・グローバル・アクションで共同所長を務めるジョシュア・ブルーメンストックは、最新データを用いて経済の課題を分析する研究を行っている。同氏によれば、このような代替指標の経時的不安定性は、経済学で「ルーカス批判(Lucas critique)」と呼ばれるもので、システムが変化すると、これまで分析のために参照してきた関係性が崩壊し得ることを指す。

ブルーメンストックは一つの例として、グーグルが2008年に開発した「Google Flu Trends」を挙げた。検索データの分析からインフルエンザの流行を予測するものだ。この試みは最初はうまくいったが、検索アルゴリズムと報道姿勢が変化するにつれて、予測は当てにならないものになり、108週のうち100週で、実測値を超過する予測を示した。

これらはみな、代替指標が正真正銘の真実ではない(少なくとも、政府発表の統計より信頼できるとは言えない)ことを物語っている。

こうしたことを念頭に置きつつ、真面目なものから奇妙なものまで、経済の現状把握に使える指標の数々を見ていこう。納得できるものもあれば、うさんくささに呆れてしまうものもある。大切なのは、どれも鵜呑みにしないことだ。

1. ADP賃金データ

何の代わりになる?:非農業部門雇用者数、雇用情勢サマリー

給与計算サービス企業のADPは、民間セクターにおける雇用の増減に関する月次報告を発表している。BLSの雇用統計の2日前に発表されるが、両者は時に、逆方向の変動を示すことがある。

ADP報告の支持者は、その長所として、数百万人に上る労働者の実際の賃金データに基づいていることを挙げる。一方、批判的な人々は、政府職員が除外されている点、季節調整の方法が異なる点、月ごとの変動が大きい点を指摘する。

公式統計と比べて的外れなことが多いのはこういった理由からだが、それでも雇用市場の先読みには便利だ。これまでも重宝されてきた指標だが、政府雇用統計の発表が停止されるとしたら、さらに注目を浴びるだろう。

次ページ > トゥルーフレーション米国総合インフレ指数

翻訳=的場知之/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事