メンタル改善効果は有意差なし、心の根本問題には届かず
こうした学習面の効果とは別に、世界でスマホの禁止が進む背景には、注意散漫の防止に加えて、メンタルヘルスへの懸念がある。しかし、その効果についての最近の研究が示すのは、より入り組んだ現実だ。今年4月に医学誌『ランセット・リージョナル・ヘルス』に発表された、これまでで最も精緻とされる研究によると、スマホの利用を厳しく制限している学校と緩やかな学校の間で、不安や抑うつなどの精神的健康に有意な差は見られなかった。厳しい制限のある学校では、生徒のスマホの利用時間が1日あたり50分も少なかったにもかかわらず、この結果になったという。
この乖離が示すのは、デバイス自体がメンタルヘルスの問題を悪化させる要因となり得る一方で、単にそれを取り上げるだけでは、問題の根底にある不安や抑うつ、社会的孤立といった要因を解決できないという現実だ。
断続的強化と説得的デザインが、思春期の脆弱性を利用する仕組み
サイバー心理学の用語で解説すると、スマホは「断続的強化」を通じて、発達途上にあるティーンエイジャーの脳内の報酬系を刺激する。これは、オンラインギャンブルが中毒性を持つのと同じ仕組みだ。スマホのメーカーは、即時的な満足感や刺激を与えることを狙った「説得的デザイン」を採用している。その仕組みは、社会的承認やアイデンティティ形成に脆弱な思春期の特性を利用する点で問題をはらんでいる。
教育や緊急連絡手段としての価値と、全面禁止が抱える課題
一方で、スマホは、適切に使えば学校での学習をより効率的で実践的かつ身近なものにすることができる。デジタルリテラシーの習得や協働を促し、その結果として批判的思考や問題解決能力の向上にもつながる。
モバイル端末は多くの生徒にとって命綱ともなる。災害時をはじめ緊急時に保護者と連絡を取れることや、障害のある生徒を支えるアクセシビリティ機能は、学校生活に役立つ機能の一部だ。
学校でのスマホ禁止を裏づける証拠は「不十分で決定的ではない」
教室でのスマホ利用をめぐる議論は続いており、政治家や教育関係者、保護者の間で制限の是非をめぐる意見は分かれたままだ。こうした中で、昨年発表された包括的レビューは、12カ国の22の研究を分析した結果、学校でのスマホ禁止を裏づける証拠は「不十分で決定的ではない」と結論づけた。


