欧州

2025.09.04 15:15

コロナ第12波? 「変異株ニンバス流行」をスウェーデン在住日本人医師はこう見る

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検査依存が生む意図せぬ結果━━面会制限も

新型コロナウイルス感染症もほとんどの人が自宅療養で軽快するようになった今、インフルエンザ同様、検査することの意義は限定的である。検査をするから治療の必要ない軽症感染者がカウントされ、統計上の波が観察され、感染拡大として報道される。その結果、過度な不安を助長する可能性がある。

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医療機関での面会制限は感染拡大の直接的原因とはならないにもかかわらず、面会が必要な高齢者や終末期の患者から家族と面会する機会が奪われているケースもある。これは家族と面会できるという当然の人権が、医学的エビデンスに乏しい根拠で侵害されているという深刻な問題でもある。

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入院している患者の家族が、自分の家族に感染させないよう注意するのは当然のことであるのに対し、医療従事者は通常通りの生活をしながら通勤している。両者の間に、どれだけ感染リスクの差があるというのだろうか。面会制限などの感染対策が、院内感染が発生した際の「予防的措置を講じていた」という弁護のために行われるという側面もある。そして、「ゼロリスク」が実現しなかった際、患者家族から賠償責任を求められる風潮にも起因していると考えられ、背景は非常に複雑である。いわゆるdefensive medicineがもたらす弊害については、国民全体で考える必要があると思う。

スウェーデンの現場経験から見た日本への提言

検査支持派の懸念にも理解を示しつつ、スウェーデンでの医療現場経験を踏まえると、より現実的な視点での検討が必要な時期に来ていると感じる。もちろん、スウェーデンのアプローチが全ての国に適用できるわけではないが、少なくとも一つの実例として、感染症検査を真に必要な場合に限定し、医療資源を無駄なく効率的に配分することが、持続可能な医療システムの構築には重要であると思う。

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過度な検査への依存から脱却し、医学的エビデンスに基づく合理的な判断を重視する医療体制への改革は、日本の医療の未来のために必要不可欠なのではないだろうか。これは筆者がスウェーデンの医療現場で日々実感していることであり、日本の医療関係者や国民の皆様にもご検討いただきたい視点である。




 

宮川絢子(みやかわ・あやこ)◎スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務。平成元年慶應義塾大学医学部卒業。スウェーデン泌尿器外科専門医、医学博士、カロリンスカ大学およびケンブリッジ大学でポスドク。2007年スウェーデン移住。スウェーデン人の夫との間に男女の双子がいる。

文=宮川絢子

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