北米

2025.09.02 12:00

政治家を外見で判断する米社会、服装批判の的はゼレンスキー大統領以外にも

米首都ワシントンのホワイトハウスで談笑する同国のドナルド・トランプ大統領(右)とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領。2025年8月18日撮影(Anna Moneymaker/Getty Images)

米首都ワシントンのホワイトハウスで談笑する同国のドナルド・トランプ大統領(右)とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領。2025年8月18日撮影(Anna Moneymaker/Getty Images)

古来より、政治家は一種の政治戦術として服装を選択してきた。古代ローマの公職者が着用していた白いトガから、現代の議員が各党の党色を身にまとう姿に至るまで、服装は政治家の印象を形成する手段だった。

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大衆に抱かせる印象という点では、米国のドナルド・トランプ大統領ほど本能的にこれを理解している人物はいない。かつてリアリティー番組で人気を博したトランプ大統領は、テレビ中継される各国の首脳らとの会談の演出について熟知している。実際、国家元首として「演じる」というこの本質的な必要性こそが、少なくとも2014年のバラク・オバマ元米大統領の黄褐色のスーツ論争(訳注:同大統領が記者会見で着用したスーツの色を巡り、インターネット上で批判が噴出した事件)以降の服装史において最も話題となった瞬間を生み出した。それは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が米ホワイトハウスを訪問した際の服装だ。

服装で政治家の成功が左右される米社会

ゼレンスキー大統領について掘り下げる前に、政治家が長年、指導者としての能力を示す手段として服装を利用してきた点に注目してみよう。長年にわたって根付いた品位に対する信念と、国民が指導者に求める服装は、政治家に対して大衆が抱く印象の重要な要素となってきた。例えば、ジョン・F・ケネディ元大統領は、米国の大統領としては史上初めて就任式で帽子を着用しなかったことで、より親しみやすい大統領のイメージを確立することに成功した。一方、大統領選挙にも出馬したヒラリー・クリントン元国務長官は、自身の代名詞にもなったパンツスーツが「男性的すぎる」とよく批判された。トランプ大統領も自身の体形に合っていない角張ったスーツを着ていることでたびたび批判を浴びている。国民の目には、この服装がだらしなさや伝統への無関心を示しているように映っているようだ。

いずれにせよ、ウクライナのゼレンスキー大統領が米国のメディアから受けた服装に対する圧力を理解するには、こうした背景を把握することが重要だ。

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翻訳・編集=安藤清香

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