米国の怒りを買ったゼレンスキー大統領の服装
米国は地理的にウクライナやロシアから離れているため、ゼレンスキー大統領が戦時の指導者であることを忘れがちかもしれない。自国が戦争のさなかにあることを強調するため、ゼレンスキー大統領は軍服風の簡素な服を着るようになり、それが同大統領らしさと派手な装飾を避ける姿勢を視覚的に表現するものとなっていった。
だが、2月にホワイトハウスで開かれた首脳会談で、ゼレンスキー大統領が伝統的なスーツではなく襟付きのシャツという簡素な服装で臨んだことを、トランプ大統領や記者団が批判したことで緊張が高まったことは記憶に新しい。ゼレンスキー大統領が一般人として自身を表現した服装は一部から称賛された一方で、米国の保守派やメディアの多くはこれをトランプ大統領に対する侮辱だととらえたのだ。
この怒りは、ゼレンスキー大統領が8月18日に再びトランプ大統領と会談した際も、依然として米政権の頭の中に残っていた。米ニュースサイトのアクシオスが伝えたところによると、会談に先立ち、ホワイトハウスの職員はゼレンスキー大統領がスーツを着用する予定かどうかを確認したという。これは、体面を重視する政治や、トランプ大統領への敬意という観点から見た他国の首脳との取引関係という大きな文脈の中で、ゼレンスキー大統領の服装がいかに重要視されていたのかを浮き彫りにしている。
ゼレンスキー大統領の適切な対応
幸いなことに、ゼレンスキー大統領はその通達の意味を理解したようだ。同大統領は自国出身のデザイナー、ビクトル・アニシモウがデザインした全身黒の衣装で登場した。前回の訪問時よりは正装だったものの、ゼレンスキー大統領はジャケットを着用する代わりにネクタイを付けない選択をし、依然として形式張らないスタイルを保っていた。そうすることで同大統領は、トランプ大統領の意向に完全に従うことと、現在戦時下にある自国を代表することとの狭間で、うまくバランスを取ることができた。
現場に居合わせた記者団も注目した。米国の記者ブライアン・グレンは前回の会談でゼレンスキー大統領の簡素な服装を嘲笑していたが、今回は「素晴らしい」と称賛。トランプ大統領も同調した。これに対し、ゼレンスキー大統領は「あなたは(前回と)同じスーツを着ている。私は着替えたのに、あなたは変わっていない」と皮肉を込めて応じた。今回の服装を巡る論争では、ゼレンスキー大統領が主導権を握ったようだ。


