起業家

2025.09.04 08:00

狙いは2度目のユニコーン、「プロテイン入りスイーツ」で挑む連続起業家の野心

スーパーに並ぶレジェンダリー・フーズの商品(The Image Party / Shutterstock.com)

スーパーに並ぶレジェンダリー・フーズの商品(The Image Party / Shutterstock.com)

連続起業家ロン・ペナ(54)は、健康志向の人々に人気のプロテインバーの製造元クエスト・ニュートリションを10億ドル(約1480億円。1ドル=148円換算)で売却した。その後、「レジェンダリー・フーズ」を立ち上げた。同社は甘いもの好きのフィットネス愛好家向けに、栄養に配慮したシナモンロール・ドーナツ・チップスなどを販売し、現在は年間1億8000万ドル(約266億円)規模の収益を上げている。

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約1480億円を得て成功後もジムに通う、起業家の素顔

ペナは、カリフォルニア州サンタモニカにあるレジェンダリー・フーズ本社から8分の距離にあるブレントウッドに、1200万ドル(約18億円)の豪邸を構えている。夫妻は2017年にこの家を購入した。かつてコートニー・コックスやトビー・マグワイアといったセレブが所有していた物件だ。その2年後、ペナは最初の会社クエスト・ニュートリションを10億ドル(約1480億円)で売却した。青々とした生け垣や広大な庭園に囲まれたこの家には、夫妻が最も気に入っている約370平方メートルのプライベートジムが設置されている。

ペナは少年時代はやせていたが、20代で32キロの筋肉を増やし、今も維持している。彼は、「栄養は特別な力を持っている」という。「私は成人後の大半を、変わった食事で過ごしてきた。高脂肪食やケトジェニック・ダイエットなど、あらゆる方法を試した。その中で定着したのはプロテインだ。普段の摂取カロリーの40〜50%をタンパク質で取っている」。

一般的に避けられがちなクッキーやケーキのようなお菓子であっても、タンパク質が豊富なら彼は迷わず食べる。

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GLP-1薬の流行が生んだ巨大市場

ペナは、クエストをデンバー拠点のシンプリー・グッド・フーズに売却する直前の2017年、スナック系プロテインブランド「レジェンダリー・フーズ」を共同創業した。同社は彼の第2幕の基盤となり、最初のユニコーン企業クエストと正面から競合する。両社はいずれも、急成長する「プロテイン入りスイーツ」市場を狙う。

サンフランシスコ拠点の非営利医療財団KFFのデータによれば、米国成人の12%がオゼンピックなどGLP-1薬を使用した経験がある。GLP-1薬とは血糖値を下げるホルモンの働きを利用した糖尿病治療薬で、米国ではオゼンピックに代表される製剤がダイエット目的でも使われ社会現象化している。

また、コンサルティング企業PwCの調査では、その影響で多くの人が食事量を減らし、食費を抑える傾向が示された。人々は体重を減らしながら筋肉を維持するため、高タンパク・低カロリーの食事に依存しつつ、満腹感も求めているのだ。

なお、ロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官は「アメリカを再び健康にする(Make America Healthy Again)」というスローガンを掲げ、食品の原料や成分を厳しく精査する取り組みを進めている。こうした施策は、GLP-1薬(オゼンピックなど)を用いて体重管理を行う人々──米国では「GLP-1世代」と呼ばれる層──の意識変化とも重なり、彼らがジャンクフードを避け、食事やスナックの品質に一層の関心を払うようになる動きを後押ししている。

ジャンクフードと健康志向を両立させたい消費者心理

「人間は習慣の生き物だ」。そう反論するのは、ロンドン拠点の調査会社ミンテルの食品・飲料アナリスト、ジュリア・ミルズだ。私たちはお気に入りのおやつを簡単には手放さない。「だからこそ、消費者はプロテイン入りのジャンクフードに惹かれる」と彼女は言う。

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編集=上田裕資

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