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2025.09.03 12:00

投資の神様バフェットが95歳に──90代米国ビリオネアは死ぬまで最前線に立つ

ウォーレン・バフェット(Photo by Paul Morigi/WireImage)

ウォーレン・バフェット(Photo by Paul Morigi/WireImage)

米国のビリオネアは「莫大な富で引退後は悠々自適」という常識を覆す。95歳で退任を表明した「投資の神様」ウォーレン・バフェットを筆頭に、90歳を超えても経営の第一線に立つ者は少なくない。その背景には、生涯現役を貫く仕事観と、驚異的な生命力を支える独自の長寿哲学がある。

5月の年次総会で退任を表明、ウォーレン・バフェットが95歳を迎える

『ウォーレン・バフェットは、5月のバークシャー・ハサウェイの年次株主総会で通算60回目の登壇を果たした。おそらくこれが最後になるだろう。赤いネクタイを身につけた彼の前には、その色とよく合う2つのコカ・コーラの缶が置かれ、1つはチェリー味のものだった。バフェットは、長寿の秘訣がマクドナルドやコカ・コーラ、デイリークイーンが中心の食生活にあると冗談交じりに語ってきたが、これらはすべてバークシャーが投資してきた企業だ。

「オマハの賢人」と呼ばれる彼の声はかすれていた。少し背を丸めてはいたが、口ぶりは鋭く、動じることなく市場混乱への質問に答えた。「この100日間に起きたことなんて、本当に大したことではない。私が生まれた1930年8月30日のダウ平均は240だった。そして、その後の最安値で41まで下がっていた」と彼は約4万人の聴衆に向かって語った。さらにバフェットは、株価が15%下がったことに不安を覚えるようなら「別の投資哲学」が必要だと述べて、今後20年間のうちに間違いなく起きるであろう、度肝を抜かれるような衝撃的な市場イベントに準備をしておくべきだと語った。

そして4時間以上に及んだ総会の最後、バフェットは突然発表した。今年の年末をもってCEOを退任するというのだ。彼が小さな繊維会社バークシャーを引き継いでから、ちょうど60年の節目にあたる年だった。「私は今後もまだ会社の周りにいて、場合によっては役に立つこともあるだろう」と彼はコメントしたが、この突然の発表は、2021年にバフェットの後継者に指名されていた腹心のグレッグ・エーブルでさえ知らされておらず、彼をも驚かせた。

90歳超えてなお最前線に立つ大物経営者

バフェットは、1982年に創設された米国400人からなる富豪リスト「フォーブス400」にすべての年で名を連ね、現在も世界で10番目に裕福な人物である。そんな彼が、平均的な米国人の退職年齢をはるかに超えてなお働き続ける事実を、異常だと感じる人もいるかもしれない。だが、同じように「死ぬまで働きたい」「生涯現役」を望む80代や90代のビリオネアはほかにも大勢いる。

米国で最年長のビリオネアは103歳

米国で最年長のビリオネアはジョージ・ジョセフで、103歳になった今も自らが1960年代初頭に創業した売上高が55億ドル(約8140億円。1ドル=148円換算)の上場企業である保険会社マーキュリー・ジェネラルの会長を務めている。第二次世界大戦で航空航法士として従軍したジョセフは、85歳でCEOを退いたものの、今も同社の35%を保有している。99歳を超えた米国のビリオネアは彼ひとりしかいない。

メディア王ルパート・マードック(94)の継承計画を裁判所が却下

売上高85億ドル(約1.2兆円)のメディア大手ニューズ・コープのエグゼクティブ・チェアマンを務めていた94歳のルパート・マードックは、約2年前にその座を息子のラクランに譲ったものの、依然として同社に強い影響力を保っている。今夏初め、トランプ大統領は訴訟を起こした。対象はマードックと、ニューズ・コープ傘下のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)だ。理由は、同紙がジェフリー・エプスタインに宛てたとされるバースデーカードの記事を掲載したためだった。その際、大統領の弁護士らは、マードックの高齢を理由に15日以内に証言させるよう強く求めたと報じられている。

ニューヨーク・タイムズによれば、その期限は延期されたが、マードックはトランプに自身の健康状態を伝えることに同意していたという。

多くの人が大ヒットドラマ『メディア王 〜華麗なる一族〜』のモデルとなったと考えているマードックは、自身の後継者問題を完全に整理できているようには見えない。昨年、ネバダ州の裁判所は、ニューズ・コープとFOXニュースの親会社の支配権を長男ラクランだけに委ねようとした、右派的な路線を維持しようとする意図が透けて見えるマードックの試みを退けた。他の3人の子どものプリューデンス、エリザベス、ジェームズには、今後も同等の議決権が与えられることになっている。

トランプが投資家ジョージ・ソロス(95)を名指し批判

トランプの攻撃にさらされている90歳以上の富豪はマードックだけではない。大統領は8月下旬のトゥルース・ソーシャルの投稿で、ビリオネアのジョージ・ソロス(95)と彼の「素晴らしい急進左派の息子」が暴力的な抗議活動に関与したとして、組織的犯罪で訴追すべきだと主張した。さらにソロスと彼の「精神異常者の集団」に向けて、「気をつけろ。我々は見ているぞ!」と警告した。

数年前にヘッジファンドの経営から引退したソロスは、世界で最も緊急性の高い支援活動のために約230億ドル(約3.4兆円)を寄付しており、長年にわたる民主党の大口献金者として知られている。

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編集=上田裕資

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