市街地にクマが現れる事件が多く報道されるようになった。これまでも、過去のクマ目撃情報に基づく予測はあったものの、それでは「意外な場所」にも現れる昨今の状況には対応しきれない。そこで、過去の目撃データと各地域の環境データからAIに予測させた「クマ遭遇リスクマップ」が誕生した。
気象関連事業を展開する日本気象は「気象予測で培った高度なデータ解析技術」を応用して、地域の植生、地形、気候などの多様な環境データを、自治体が公表している過去のクマ情報と組み合わせた機械学習モデルを構築。クマが出やすい環境パターンをAIに学習させた。そうして、250mメッシュという高解像度でクマとの遭遇リスクを評価したマップを作成し、同社の「お天気ナビゲータ」のサイトで公開した。
地図上には、クマと遭遇しやすい場所と危険度が色の点で示されている。青から赤に変わるに従って遭遇の確率があがる。同時に同サイトでは、ツキノワグマの習性や過去の被害状況などのデータも示されていて、マップとあわせてクマに遭遇しないための知識を深めることができる。たとえば、2012年からの「ツキノワグマ被害人数とブナの豊凶指数の関係」を示したグラフでは、ブナの実の出来とクマの被害件数が連動していることがわかる。日本気象によれば、2025年は「東北各県でブナが大凶作の見通し」とのことで、警戒が必要だ。

またクマに遭遇しやすい環境としては、クマが通り道に使う河川沿いに帯状に広がる林、見通しの悪い草地、水辺などをあげている。
ただし、このマップの利用には注意点がある。本州のツキノワグマに限定していること。人の生活圏での遭遇リスクを評価したものなので、本来のクマの生息地である山林は除外していること。そしてもちろん、あくまでAIによる予測なので「遭遇しないことを保証するものではありません」ということだ。
今後はさらに開発を進め、本州以外の地域にも広げるほか、「出没予測情報」も開発すると日本気象は話している。



