経営の継承と家族所有の強み
2012年にアイクが死去し、息子で現在68歳のマイケルが表舞台に立った。そのマイケルも2023年にCEOの座を40歳の息子のヴァンセンに譲り、会長を務めている。
メリダにとって、家族経営であることと上場企業であることは、プラスだとツェンは語る。ツェンの一族は、同社の20%以上の株式を保有しており、上場と知名度によって優秀なエンジニアや人材を引き寄せることができる。一方、経営トップに創業家の人間を置くことは、外部から招いた経営者にはない権威をもたらすという。
「台湾の企業文化では、創業家が経営に関与していなければ、トップの指導力は弱まる」とツェンは話す。「創業者が過半数の株式を持っていなくても、主要な事業を創業家が率いているケースは珍しくない」と彼は説明した。現在、メリダの従業員数は約2700人にのぼる。
世界的なEバイク成長、関税の影響は限定的
ツェンが指摘した自転車業界の重要な世界的トレンドのひとつがEバイクの成長だ。「欧州では、すでに多くの人々が生活の一部としてEバイクを利用している。通勤や通学、買い物に使っている」と彼は語る。「米国での成長はよりスポーツ用途に偏っているが、それでもEバイクのトレンドは上向きだ」とツェンは続けた。
この見方は、米マサチューセッツ州に拠点を置くSkyQuest Technology Consultingが最近発表した強気のレポートとも一致する。そこでは、2025年から2032年にかけて世界のEバイク販売が年平均10%のペースで増加し、2032年の市場規模が898億ドル(約13.2兆円)に達すると予測されていた。
「急速な都市化と主要都市での交通渋滞の悪化がEバイクの普及を後押ししている。コンパクトな設計や手頃な価格、取り回しやすさは短距離移動に最適だ。Eバイクはラストワンマイルの交通問題を解決し、アクセス性を高め、自家用車への依存を減らしている」とSkyQuestは述べている。メリダのほか、Eバイク市場の成長の恩恵を受けるサプライヤーにはジャイアント、ヤマハ、ボッシュ、トレックが含まれる。
米国が8月に発表した台湾向けの20%の関税率は明確さをもたらすものの、その影響は「限定的だ」とメリダの上席副総裁のダリル・チャンはコメントした。米国における売上高は、昨年の全体のわずか11%にとどまるという。さらに、台湾に対する20%の関税は、米国市場向け自転車の主要な生産拠点であるベトナムやカンボジアに課された新たな負担より高くはない。「これらの国々と比べて不利な点はない」とチャンは語った。
一方、台湾の半導体関連の大幅な貿易黒字を背景に、米ドルは今年これまでに新台湾ドルに対して7%下落し、米ドル建て収入が中心のメリダに圧力をかけている。同社のもう1つの重要市場である中国本土も、今年は消費の低迷に苦しんでいる。
在庫調整の懸念は和らいだものの、メリダが今後の行方を注視すべき課題はまだ数多く残されている。


