政治

2025.09.01 09:30

ほころびるグローバリゼーション、注視すべき4つの潮流 日本にも「異変」

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最近発表された数多くの企業決算やマクロ経済データのなかで、とくに筆者の関心を引いた動向が2つある。いずれも地政学的な大きな力のせめぎ合いを映すものだ。

ひとつは、米国の2024年の出生数が欧州連合(EU)に追いついたことだ。人口はEUのほうがはるかに多いにもかかわらず、出生数はおよそ360万人でほぼ並んだ。比較のために言うと、ナイジェリアはEUの半分足らずの人口だが、昨年700万人ほどの子どもが生まれている。

もうひとつは、日本のここ数カ月の消費者物価指数(CPI)上昇率が数十年ぶりに米国を上回っていることだ。これは日本経済の変化を示唆しており、長期国債の利回りの上昇も伴っている。この長期金利上昇は国際金融システムにとって重大な動きになる可能性をはらむ。

これら2つの事例からは、グローバリゼーションの退潮が始まって以来、加速している国の盛衰の一端が垣間見える。グローバリゼーションの退潮は、香港で民主主義が事実上死んだのが起点だったというのが筆者の見立てだ。

この盛衰(国をスポーツチームのように考えてみるとわかりやすいかもしれない)は、世界秩序のほころびとも関連している。たとえば、先日のコラムで論じたように、米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性はホワイトハウスによって蝕まれている。ドナルド・トランプ米大統領によるリサ・クック理事の解任の試みは、彼がFRBをみずからの経済政策のエンジン役(筆者が勘ぐっているのは巨大な国債買い入れ機関にすることだ)として使いたがっていることを裏づけている。

独立性を保ったFRBは、40年ほど続いたグローバル化した世界システムを支える柱のひとつだった。FRBの独立性が失われつつあることもまた、このシステムのほころびを告げている。ちょうどグローバル化の時代が低インフレと大規模な戦争の不在によって特徴づけられていたように、今日のインフレと戦争の存在は別の時代に入りつつあることを示している。

こうした文脈で筆者は、すでに少し触れたような「ほころびの法則(Unravelling Rule)」という仮説の検証を思考実験として行っている。これはごく簡単に言うと、グローバリゼーションを支えてきた主な要因や、グローバリゼーションによるプラスの結果を特定したうえで、それがほころんでいるかどうか、あるいはどのようにほころんでいるか見極めることだ。たとえば民主主義の危機も、こうしたほころびという趨勢のひとつに数えられる(英エコノミスト誌の調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット=EIU=による「民主主義指数」の2024年の世界平均スコアは過去20年近くで最低を記録している)。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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