政治

2025.09.01 09:30

ほころびるグローバリゼーション、注視すべき4つの潮流 日本にも「異変」

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2つ目は、国際ビジネスとの絡みでのコーポレートガバナンス(企業統治)と法の支配だ。しばらくの間、法の支配やガバナンスの危機は見られなかったが、分散型金融(暗号資産などの取引)の台頭、米国での「ディール術」という新たな流儀の出現、中国が世界規模で展開している地政学的な意味合いもある貿易関係といった動きが出ている。グローバルな「物事のやり方」が、リージョナルなやり方やローカルなやり方に取って代わられていくなかで、契約の厳密性やビジネス関係の管理は企業がこれまで以上に慎重に考慮すべき事柄になるだろう。

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グローバリゼーションの3つ目の潮流で、「ほころび仮説」の真のリトマス試験紙になりそうなのが、米国の多国籍企業による世界経済の支配だ。1990年代後半、ある著名な貿易経済学者が米空軍の戦略爆撃機になぞらえてグローバリゼーションの「B-52」と表現したように、米国の多国籍企業は世界経済を形づくり、金融市場を支配するに至った。最近では、米半導体大手エヌビディア1社の時価総額が、欧州の主要な株式市場全体の時価総額よりも大きいことを示すチャートを飽きるほど目にする。これら米国の巨大企業は潤沢なキャッシュを持つものの、ここへきていくつかの課題に直面している。技術の「自給自足」を高めている中国で販売が難しくなってきていること、トランプ政権の貿易・外交政策のあおりで国外での販売が副次的な打撃を受けていること、アフリカやインドといった市場で現地の好みに合った需要が高まっていることなどだ。

4つ目の潮流はEUの成功だ。ここでの「ほころび」がもしEUが「ハード」な面を解き放つというものであれば、筆者としてはむしろ歓迎したい。過去40年、EUは拡大や単一通貨ユーロの保持、欧州人としてのアイデンティティーの形成(シェンゲン協定で保障された域内の自由な移動やエラスムス計画による域内の交換留学の促進などによって)で成功を収めた。ポーランドやエストニアのような国はこれによって大きな恩恵を受けたし、英国はEUに残留するほうが得策だったと言っていいだろう。ただ、これまで力点が置かれていたのは概してハードパワーよりもソフトパワーだった。厳しさを増す世界では、EUはより強硬なスタンスを打ち出す必要があるだろう。

課題はたくさんあるが、とくに3つ挙げたい。1つ目は、ハンガリーやセルビアのように、EUの価値観や利益に沿った行動を常習的に拒む加盟国や加盟候補国を排除する可能性である。2つ目は、欧州でのロシア(場合によっては中国やイランも)による破壊工作により攻撃的な対応をとること。3つ目は、欧州の役割やみずからが代表するもの、存在意義についてのナラティブを回復することだ。

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forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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