政治

2025.09.01 09:30

ほころびるグローバリゼーション、注視すべき4つの潮流 日本にも「異変」

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確かだと思われていたものはほかにもほころんでいる。とりわけ、米国は欧州や多くのアジア諸国にとって揺るぎない同盟国だという前提もぐらついている。それどころか、米国がこれらの国や地域を弱体化させるおそれすら生じている。これに関連し、デンマーク政府が自治領グリーンランドでの米国人3人の行動(編集注:トランプ政権関係者とされる少なくとも3人が秘密裏の影響力工作を行っていた疑いが持たれている)をめぐって、米国の駐デンマーク代理大使を呼び出さざるを得なくなったというのは憂慮すべき事態であり、ホワイトハウスの大きな汚点だ。

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ほころびの法則の危ない点は、この混沌とした世界では、つい何でもかんでもにほころびを見いだしてしまいそうになることだ。とはいえ、国際機関の場合は実際、ほころびが比較的あらわだ。国連、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)は経済規模がかなり大きな国や地域に無視されがちで、ひどく弱体化させられしまうこともある(WTOがまさにそうだ)。これらの国際機関はつくり変える必要があり、おそらくは人口の多い新興国に資するようなかたちで再構築されるべきなのだろう。

より推論ベースでは、過去40年を特徴づけ、いま転換点を迎えているのか注視すべき潮流が少なくとも4つある。

1つ目は貧困の削減だ。世界銀行によればグローバル化は世界で10億人規模の人々を貧困から抜け出させることに寄与したが、この側面は過小評価されている。筆者が懸念しているのは、主要な経済国(全体で世界の国内総生産=GDP=のざっと3分の2を占める)の政府債務がGDP比で100%を超えるような状況では、経済的な不安定性が再び訪れかねず、しかも今度はそれが先進国で起こるおそれがあることだ。

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以前に取り上げたように、米国では所得格差がきわめて高い水準にあり、広範な経済的脆弱さが認められる。欧州では、英国やフランスの政策当局者がIMFによる自国経済への介入という不吉な可能性に言及している(もっとも、そのためにはIMF自体が刷新され、規模も拡大していなければ無理だろうが、これは現在のホワイトハウスのもとでは起こりそうにない)。この点で、英国の地域間(ロンドンとの比較で)の所得格差拡大には注意を払う必要がある。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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