サイエンス

2025.09.03 17:00

最高齢127歳、老化に抗う淡水魚「ビッグマウスバッファロー」の謎

Alus164

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人は、90歳まで生きられれば幸運だ。動物の中には、次の季節まで生きられない種もいる。そして、私たちの老いに対する常識をあざ笑うかような例外も存在する。

ニシオンデンザメの中には、ナポレオンが生まれる前から、北極圏の深海を眠たげに泳いでいる者もいる。ニュージーランドのムカシトカゲは、とげだらけの原始的な爬虫類の生き残りだが、研究者の世代を超えて生き延びることもある(寿命は100年以上とも言われている)。

しかし、こうした長寿の生き物の中でも、北米のある淡水魚は、まるで別世界の生き物のように感じられる。

米国とカナダの湖や川に生息するビッグマウスバッファローは、120年以上も生きることができる。現時点で確認されている最高齢は127歳だ。

ほかの長寿の動物に比べれば若いかもしれないが、奇妙な特徴はこれだけではない。半世紀以上も新しい世代が生まれていない個体群が存在し、しかも、年齢とともに衰えるどころか、どんどん健康になっているように見えるのだ。

動物界で、長寿は珍しくない。しかし、ビッグマウスバッファローは常識を覆す存在だ。

ビッグマウスバッファローは、急いで個体数を増やすつもりはない

ビッグマウスバッファロー(学名:Ictiobus cyprinellus)は、オリーブ色の太い体を持ち、多くの場合、銅色や黒色の斑点に覆われている。体長は120cm、体重は35kgに達することもある。淡水魚では珍しい濾過摂食者で、口は前方を向いている。獲物を追うより、プランクトンをこし取ることに特化しているのだ。

ほかの淡水魚とは異なり、定期的に繁殖することはなく、一部の個体群は、繁殖に成功する世代の間隔が数十年も空いているように見える。

カナダのクアペル川水系に暮らす個体群を研究した科学者チームは、ほとんどの個体が20世紀半ば以前に生まれたことを発見した。2018年から2021年にかけて観察された52匹のうち、1997年以降に生まれたのはたった1匹だった。学術誌『Canadian Journal of Fisheries and Aquatic Sciences』に発表された2023年2月の研究によれば、残りの個体が生まれた年は、過去1世紀以上のなかで、わずか13の年に集中していた。

これは、繁殖の好条件がめったに起こらず、それに適応する戦略をとっているためだ(これは、「episodic recruitment[断続的な補充]」と呼ばれる戦略だ)。

ビッグマウスバッファローが産卵を成功させるには、特定の環境条件が必要となる。例えば、冠水した直後で植物が存在する水域や、摂氏15.5度から18.3度という狭い温度範囲などだ。

これらの条件のいずれかが満たされない場合、卵はふ化に失敗するか、ふ化してもすぐに食べられてしまう。

こうした長い空白期間を耐え抜くため、ビッグマウスバッファローは驚くべき対処法を進化させた。悪い年が続いても、ひたすら生き延びるという方法だ。1世紀以上生きることで、条件がすべてそろい、新世代が定着できる稀なチャンスをものにする確率を高めているのだ。

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翻訳=米井香織/ガリレオ

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