ロシアによる軍事侵攻は国際経済にも影響を与えている。世界銀行は6月、ロシアによるウクライナ侵攻が食品市場を混乱させ、世界的なインフレを助長していると報告した。ウクライナが農産物の輸出を制限されたことで、世界中で食料価格が上昇したためだ。国際食料政策研究所(IFPRI)によると、世界的な食料価格の上昇を緩和するため、EU、オーストラリア、カナダが小麦輸出を増加させている。
ロシアの軍事侵攻の影響は世界のエネルギー市場にも及んでいる。同国がウクライナへの全面的な侵攻を開始すると、欧州諸国はロシア産の石油・天然ガスへの依存を減らすと表明した。これに伴い、欧州諸国は化石燃料から再生可能エネルギーや液化天然ガス(LNG)に重点を移した。その結果、欧州の企業や消費者はエネルギー価格の高騰に見舞われた。欧州委員会は電力価格や暖房費の高騰を緩和するために、エネルギー効率を高める計画を発表した。
このように、ロシアの軍事侵攻はウクライナだけでなく、世界中の国々に重大な影響を与えている。ロシアの侵攻で数百万人のウクライナ人が避難を余儀なくされ、数千人もの命が奪われた。ロシア軍は今もウクライナ全土で爆撃を続けており、多くの住宅地を破壊している。
ロシアとウクライナの和平交渉の可能性
これらを踏まえ、各国の首脳はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と協議し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との停戦合意を実現する可能性を探っている。8月18日には米国のドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスでゼレンスキー大統領と会談し、欧州の首脳らを交えて戦争終結について協議した。各国の首脳は、和平を実現することでウクライナの民間人居住区の破壊を食い止めることができ、多くの人命が救われると考えている。
だが、ニューヨーク・タイムズとドイツ公共放送ドイチェベレが報じたところによると、ロシアは6月以降、ウクライナに対するドローンとミサイル攻撃を激化させている。特に、ホワイトハウスでの首脳会談中にもロシア軍が攻撃を仕掛けたことを踏まえると、必ずしも和平が早期に実現するとは限らないだろう。西側の首脳は今後、和平の実現に向けた新たな戦略を練る必要が生じるかもしれない。いずれにせよ、現在のやり方では戦闘の終結には至っていないようだ。


