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2025.09.02 09:00

使用済み核燃料は「宝の山」 AI時代の電力需要を支える再利用の道

Shutterstock.com

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米国ではエネルギー安全保障やAI普及に伴い、電力需要が高まっている。一方で、長期にわたり危険性を持つ使用済み核燃料の処理は大きな課題だ。こうした背景を受けて、新しいスタートアップが登場した。同社は、核廃棄物を燃料やロジウム・パラジウムといった産業用途の貴金属(レアメタルの一部)、さらにクリプトン85やアメリシウム241などの放射性同位体に変換できる技術を打ち出し、注目を集めている。

核廃棄物から燃料と産業用途の貴金属を生成

そのスタートアップとは、Curio(キュリオ)だ。CEOのエド・マギニスはかつて、エネルギー省の原子力担当次官補代行を務めていた。彼によると「使用済み核燃料は、危険な廃棄物ではなく宝の山だ」という。

マギニス氏は最近、筆者のTechFirstポッドキャストでその根拠を語った。「米国で核燃料を5年間稼働させた後でも、エネルギー価値のわずか4%しか使われていない」と彼は説明する。続けて「ウランは核分裂の際に、医療、宇宙探査、産業プロセスに使える多様で極めて価値の高い同位体を大量に生み出す。希少な貴金属まで生成される」と強調した。

AIの電力需要増大とロシアへのウラン依存

現在、米国では94基の商業用原子炉が稼働しており、その総発電容量は約97ギガワットに達する。これは国の電力の約19%を賄う規模にあたる。しかし、米国はウランの供給やその濃縮のインフラの多くをロシアに依存しており、エネルギー安全保障上、望ましい状況ではない。さらに、現在の人工知能(AI)ブームによって、マイクロソフトやグーグル、アマゾンといったテック大手が、カーボンニュートラルな生成AIを稼働させるため、より多くの原子力発電を求めている

そして、その解決策は「有害な核廃棄物の山の中にある」とCurioは述べている。

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編集=上田裕資

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