米国の厚生省と疾病対策センター(CDC)は、肉食の寄生虫「新世界ラセンウジバエ」が人間に寄生したことを確認した。今回の症例は、エルサルバドルから最近帰国した米メリーランド州在住者から確認された。同人物はその後回復し、周辺地域で新世界ラセンウジバエは検出されていないことから、今後差し迫った脅威となる可能性は低いとみられている。
新世界ラセンウジバエとは
ラセンウジバエはクロバエ科に属する。「新世界ラセンウジバエ(学名:Cochliomyia hominivorax)」は現在、南米からカリブ海諸国の熱帯および亜熱帯地域全体に生息している。一方、関連種の「旧世界ラセンウジバエ(同:Chrysomya bezziana)」は、アフリカ、アジア、インドの熱帯および亜熱帯地域で見られる。
ラセンウジバエ自体は危険ではない。動物を刺したり、かみついたりしないからだ。このハエは通常、感染性病原体の媒介として機能することもない。
危険なのはラセンウジバエの幼虫
他のハエ類と同様、ラセンウジバエは4段階のライフサイクルを経る。卵から幼虫が孵化(ふか)し、幼虫は成長した後でさなぎとなる。さなぎの中で身体が変形し、最終的に成虫となったハエが羽化して飛び立つ。成虫が交尾し産卵することで、このライフサイクルが繰り返される。
ハエの種の大半は、死んだ有機物や腐敗した有機物に卵を産み付け、幼虫がその有機物を食べる。この過程については、誰もがよく知っているだろう。ハロウィン後に腐ったかぼちゃや道路脇の動物の死骸に見られるうじ虫が、ハエの幼虫だ。
ところが、ラセンウジバエは異なる。ラセンウジバエは生きた動物、特に哺乳類に産卵するのだ。卵は通常、露出した傷口に産み付けられることが多いが、鼻や口の内部などの粘膜に付着することもある。孵化した後、幼虫は生きた動物や人間の肉を食べる。幼虫は肉を食べるために宿主の組織へ自らねじ込むように侵入していくことから、この名前が付いた。



