アジア

2025.08.29 15:00

中国でフードデリバリー競争激化 大手「美団」が利益97%減、創業者が資産1600億円失う

StreetVJ / Shutterstock.com

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中国のフードデリバリー大手「美団」の創業者である王興(ワン・シン)の保有資産は、同社の株価が8月28日午前の取引で最大11.3%下落したことを受け、約11億ドル(約1620億円)減少した。この下落は27日に発表された美団の第2四半期決算で、純利益が97%減となったことを受けてのものだ。

46歳の同社の会長兼CEOのは、フォーブスの試算によれば依然として90億ドル(約1兆3200億円)の資産を保有しているが、その大部分が同社株の持ち分に基づくものだ。しかし、今後の見通しは厳しい。アリババやJDドットコムといったEC大手が新規ユーザー獲得のためにフードデリバリー事業へ巨額投資を続けるなか、美団も四半期あたり数十億元を投入して市場シェアを守り、競合と同水準のクーポンや利用者向けの割引を提供せざるを得ない状況にある。

「アリババがフードデリバリーへの投資を続けるのであれば、美団は、もはやついていけないのではないかと投資家は大いに懸念している」と、調査会社ブルーロータス・キャピタル・アドバイザーズの香港拠点のリサーチ責任者エリック・ウェンはコメントした。

実際、値引き競争は大きな打撃を与えている。今年6月までの美団の第2四半期の純利益は、前年同期比97%減の3億6530万元(約75億3000万円)に落ち込んだ。これは、売上高が前年同期比11.7%増の918億元(1兆8900億円)に上昇したにもかかわらずだ。

27日のアナリスト向け電話会見で、ビリオネアの王は「当社は、これまでにも激しい競争に直面しており、この戦いにも勝ち抜く」と語った。美団の最高財務責任者(CFO)の陳少暉は、主力のローカルコマース事業(主にフードデリバリー)が「戦略的支出」のために、現状の四半期に「大幅な損失」を計上する見込みだと説明した。

ブルーロータスのウェンの推計によると、アリババ、JDドットコム、美団の3社は現金残高の減少から見て、クーポンや割引のために四半期ごとに合計約20億元(約412億円)を投じているという。ウェンは、ユーザー獲得競争が今後も続き、このフードデリバリー戦争が年内は続くとみている。ただし、来年初めに各社が人工知能(AI)などの他分野に投資を振り向けるようになれば、この競争が沈静化する可能性もあると彼は述べている。

しかし、投資調査会社DZTリサーチのシンガポール拠点におけるリサーチ責任者コー・ヤンはさらに悲観的だ。「中国のフードデリバリーにおける過酷な競争は、少なくともあと12カ月は収まらない」と彼は語り、「美団は国内事業の値引きに加えて、海外展開にも投資が必要であり、利益は引き続き圧迫される」と分析した。

海外展開にも投資が必要

地域サービス大手の美団は、中国本土以外の市場でフードデリバリーサービス「Keeta」を展開している。同サービスは、香港ではライバルのデリバルーを打ち負かし、3月に撤退に追い込んだ。利用者に気前の良い割り引きを提供することで人気を博したKeetaは、2023年の開始以来、香港で最も人気のフードデリバリーの一つとなっている。美団の第2四半期決算によると、Keetaはサウジアラビアにおいても7月末までに20都市へと拡大した。

「国際展開は一朝一夕で利益を生むものではない。黒字化するまでには、少なくとも1〜2年の投資が必要だ」と、DZTリサーチのコーは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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