北米

2025.08.29 09:30

TikTokが「米国以外で急成長」、トランプによる禁止措置に直面も収益4割増の9300億円

Ringo Chiu / Shutterstock.com

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中国のソーシャルメディア大手バイトダンスにとって、2024年は非常に厳しい年になったが、同時に良い年でもあった。

米国ではバイデン前大統領が、バイトダンスにTikTokの売却を迫り、さもなければ禁止するという法律に署名した。一方、米国以外の地域におけるTikTokの収益は、38%増の63億ドル(約9280億円)に跳ね上がった。

TikTokの英国や欧州、ラテンアメリカにおける事業の収益は、2022年に26億ドル(約3830億円)だったが、それ以降に2倍以上に増加したことが、英国の企業登記所であるカンパニーズハウスに提出された書類で明らかになった。

TikTokはいまだに黒字化していないが、改善しつつある。2024年の税引き前損失は6億1600万ドル(約908億円)に縮小し、2023年の14億7000万ドル(約2170億円)から減少した。同アプリは、黒字化に向けて前進するなかで、米国外での成長率は鈍化したものの、それでも38%という大きな伸びを示した。2023年のTikTokの収益は、75%増加していた。

今回の提出書類はTikTokの世界全体の収益の一部しか示しておらず、親会社のバイトダンスの財務状況のごく一部のみを反映するものだ。同社は、TikTokの中国版である「抖音(Douyin)」や中国のニュースアプリ「今日頭条」に加えて、学習支援アプリの「Gauth」や写真共有アプリの「Lemon8」などの人気の人工知能(AI)アプリやツールも運営している。

テック系メディアのThe Informationは、バイトダンスの昨年の収益が29%増の1550億ドル(約22兆8000億円)となり、メタの売上高1645億ドル(約24兆2000億円)に肉薄したと報じていた。

その急成長にもかかわらず、TikTokは世界各地の規制当局からの一連の訴訟や調査に直面している。米国では、トランプ大統領がTikTokに対する禁止措置をめぐって、法的に疑わしい4度目の一時的猶予をバイトダンスに与える構えを見せている。これに対してヨーロッパでは、TikTokは昨年、欧州各国政府から将来的に科される罰金に備えて10億ドル(約1470億円)を引当金として計上しており、各国政府がいまTikTokに相次いで圧力をかけている状況を考えると、その判断には先見の明があったと言える。

欧州各地で相次ぐ締め付け

欧州委員会は昨年末に、TikTokに対して正式な手続きを開始したが、これは2024年のルーマニア大統領選挙において、同プラットフォーム上の偽アカウントが選挙結果に影響を与えることを許容し、選挙の公正性に与えるリスクを軽減できなかったとされる疑いによるものだ(ルーマニア政府は、昨年11月の大統領選でTikTokが親ロシアの極右候補を優遇したことを理由に、選挙結果を無効とする前例のない措置を取った)。

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編集=上田裕資

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