質量が太陽の10〜100倍という大質量星は、短時間に強烈な光を放つ超新星爆発でその生涯を閉じる。その際、恒星の外層を構成する元素が吹き飛ばされてその内部がわずかに観測できるのだが、2021年に発見された超新星SN 2021yfjは、なんといちばん深い「骨」の部分までさらしていたことが地上からの観測によってわかった。
恒星は、水素やヘリウムなどの軽い元素が集まり、中心部の圧力で高温化し核融合が起こって光を放つ。同時に星の中心部では核融合により新たな元素が合成される。それらがさらに核融合を起こし、元素工場さながらに重い元素が次々と生み出され、タマネギのような層構造が作られるとされている。最終的にもっとも安定した鉄ができると、そこで核融合は終わり、今度は強烈な重力収縮が始まる。その力に耐えられなくなるとブラックホール化したり、超新星爆発を起こしたりするというわけだ。
そのとき、外層の軽い元素が吹き飛ばされて恒星の内部がわずかに観測できるのだが、SN 2021yfjのように「骨」まで見えたのは初めてだ。これにより、ずっと以前から理論的に予言されてきた恒星のタマネギ構造が、観測的に証明された。
これを発見したのは、京都大学、米国ノースウェスタン大学、スウェーデン・オスカー・クライン・センター、イスラエル・ワイツマン科学研究所などによる国際研究チーム。アメリカのツビッキートランジェント天体探査装置(ZTF)が2021年に捉えたSN 2021yfjが発する光の波長を分析したところ、そこにシリコン、硫黄、アルゴンといった重い元素が放出する強い光が含まれていることがわかった。これはまさに鉄の核を取り巻く星の中心部、恒星の「骨」とも言える部分が「見えた」証だ。
大質量星のタマネギ構造が立証された大発見ということだが、ではなぜそこまで外周の元素が吹き飛ばされてしまったのか、これは珍しい現象なのかどうかなど、さらなる研究課題が提示される結果となった。わかればわかるほど謎が深まるのが研究の世界。それにしても、宇宙は外も内も果てしない。



