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2025.09.16 11:00

“The Best of The Biggest” 海を渡った「然土」が見据えるSAKEの未来

2025年7月8日、英国ロンドンのバッキンガム宮殿にほど近いThe Royal Automobile Club(王立自動車クラブ)は静かな熱気に包まれていた。この日、日本を代表する大手酒造メーカーである宝酒造が販売している日本酒「然土(N・end)」が初めて海外輸出をスタートさせ、英国を始めとするヨーロッパのトップソムリエやジャーナリストに向けて披露される手はずとなっていたからだ。「松竹梅」で知られる宝酒造が手がけるプレミアムな日本酒「然土」とはどんな日本酒なのか。また海外ではどのように受け止められたのか。日本在住の日本人として唯一マスター・オブ・ワイン(MW)の称号をもつ大橋健一MWほか、プロフェッショナルの言葉からその魅力を探る。


世界で高まる日本酒への期待

ロンドンで行われた「然土」マスタークラスには30名ほどのマスター・オブ・ワインやマスターソムリエ、またアルコール飲料や日本酒に精通したゲストが参加した。
ロンドンで行われた「然土」マスタークラスには30名ほどのマスター・オブ・ワインやマスターソムリエ、またアルコール飲料や日本酒に精通したゲストが参加した。

この日、海外で初披露の場を得た「然土」だが、今年5月に発表された、世界最大級のワインコンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2025」のSAKE部門において、「然土」は見事にトロフィーを受賞している。その実力は世界へ示されていたが、審査員がブラインドテイスティングで審査するIWC審査会とは異なり、「然土」の日本酒づくりのフィロソフィーや生産の背景を知ることができるマスタークラスが初めて開催されたというわけだ。

「日本ではあまり知られていませんが、ロンドンは世界のワインビジネスのキャピタルかつ、世界への情報発信のハブとなる都市。ここで海外進出のお披露目をできたことは非常に有意義で、大きな一歩であると感じます」と語るのは、ロンドン在住で日本酒の海外プロモーションなどを手掛ける吉武理恵(以下、吉武)。

「実は英国における日本酒の歴史は長く、1878年にはすでに輸入されているのですが、注目が高まっているのはここ10年ほど。13年に和食がユネスコの無形文化遺産(世界遺産)に登録されたことをきっかけに、日本酒への認知が急速に広がりました。以前はお燗して飲む方が多かったのですが、最近は冷酒が一般的になってきています。2007年にIWC審査会の中にSAKE部門が設置されて、受賞酒が英国業界と消費者に紹介されだしたこと、また、WSET(ロンドンに本部を置く世界最大のワイン教育機関)によるSAKEのカリキュラムが14年にスタートし、日本酒を知るためのエデュケーションが整備されたことも功を奏し、急速に期待が高まっていますね」

日本在住の日本人として唯一マスター・オブ・ワインの称号をもつ大橋健一氏(左)と、長年ヨーロッパで日本酒の啓発に勤めてきた吉武理恵氏(右)。
日本在住の日本人として唯一マスター・オブ・ワインの称号をもつ大橋健一氏(左)と、長年ヨーロッパで日本酒の啓発に勤めてきた吉武理恵氏(右)。

最大手酒造が最上の酒をつくる意味

またこの日のマスタークラスでスピーカーを務めた大橋健一は、実はこの「然土」は自身が宝酒造に持ちかけたプロジェクトをきっかけに生まれたと明かしながら、その開発の背景を語ってくれた。

「日本酒の海外輸出は右肩上がりに増加しており、25年には世界109か国で展開されるなど堅調に推移しています。が、生産量自体は1973年をピークにずっと減少し続けているんです。日本酒をワインのように食中酒として大きく世界で流通させるためには、最大手酒造が最上のものをつくる必要があるとずっと考えていました」

自身が代表を務めるリカーショップ「intertWine K×M」(東京・麻布台ヒルズ)にて大橋健一氏。
自身が代表を務めるリカーショップ「intertWine K×M」(東京・麻布台ヒルズ)にて大橋健一氏。

たとえばフランスの大手シャンパーニュメゾン、モエ・エ・シャンドンが上位ブランドとして「ドン ぺリニヨン」を持つように、またカリフォルニアワインの第一人者であるロバート・モンダヴィがかつて「オーパス・ワン」を誕生させたように。世界の誰もが知り、憧れるようなプレミアム酒は高い品質とブランドイメージはもちろんのこと、誰の目にも触れる場所にあり、機会さえあれば購入できるアクセシビリティを備えることによって初めてアイコンとしての価値と輝きを放つ。

「もちろん従来の日本酒にもプレミアムな商品はありましたが、生産数が少ないために、ごく限られた人の手にしか渡りません。世界でプレミアムな日本酒というカテゴリーを創出し、訴求するには、安定した生産環境をもち、スケール(拡張)する力をもっている大手酒造であることが必要なのです。そこで宝酒造で20年に発足したのがこの『然土』プロジェクトでした」

あえて磨きすぎないという選択肢

最大手酒造による最上の日本酒をつくる、という命題のもとに、試行錯誤の末、生まれたのは兵庫県西脇市の契約農家とともに品種改良に取り組んだ山田錦を全量使用し、伝統的な生酛づくり、重力の力だけで酒を搾る袋吊りで米の旨味を十分に引き出した酒であった。宝酒造の日本酒開発チームでリーダーを務める大谷文久は語る。

「日本酒は米の酒であるという原点に今一度立ち返り、米のうまみが溶け込んだようなお酒をつくろうと考えたとき、酒づくりの原点である生酛づくりへと回帰しました。また、大吟醸や吟醸などという特定名称にもあえて触れず、米を磨きすぎずにふくよかな味わいを実現させています。精米歩合の高低だけでなく、つくりに応じたさまざまな米の旨みを提案することで、日本酒の可能性と選択の幅を広げていきたいと考えています」

日本酒では精米歩合50%以下の酒が大吟醸酒と称することができるが、昨今では純米大吟醸酒がもてはやされ、なかには精米歩合1%以下の日本酒も登場している。精米歩合が低い酒はそれだけ雑味が少なく、綺麗ですっきりとした酒になる傾向があるものの、それだけがおいしさの基準になるものではないだろう。前出の吉武も「然土」を「磨けば磨くほどうまい」という誤った価値観から解放された1本としておおいに評価する。

「精米歩合はわかりやすい指標ではありますが、“Less is not always more”。たくさん磨いたから必ずしもおいしいというわけではありません。米のうまみをしっかりと残した『然土』は厚みのある味わいと、華やかで奥行きのある香りで満足感の高い1本。ここロンドンでは『松竹梅』ブランドを知らない人がほとんどですが、なにしろおいしい、“WOW”のある酒だとコメントしています。欧米の食のエキスパートたちにとって、ブランドや精米歩合はあくまで参考にしかすぎませんから。大切なのは日本酒としての味わい、魅力だけです」

自然と共生する酒「然土」の未来

またロンドンのマスタークラス参加者からは味わいについての高い評価や、日本酒の価値とは何かという対話を始めるよい機会だというコメントとともに、「然土」の環境への配慮を評価する声も多く聞かれた。温室効果ガスとして知られるメタンガスは水田からも多く排出されているが、「然土」は夏に圃場の水を抜く期間を長くすることや、肥料として漉き込む稲わらの早期分解を進めることで、メタンガスの発生を抑制。一部の試験圃場でメタンガスを90%削減することに成功している。

宝酒造は70年代に「カムバック・サーモン キャンペーン」*を展開、94年にはリターナブル瓶を導入するなど、環境保全にいち早く取り組んだ企業としても知られているが、こうした取り組みが世界へ伝わることで、「然土」は、“味わい”だけでなく“物語”でも世界を魅了するだろう。環境への配慮は、未来の米と水を守り、ひいては未来の酒を守ることにつながっている。

 *カムバック・サーモンとは、戦後の高度成長期の自然破壊により途絶えたサケの回帰を復活させる活動。宝酒造は1979年に支援を発表し、宝焼酎「純」の協賛記念ボトルの売り上げを寄付するなど、その活動に貢献した。 

マスタークラス後のランチでは「然土」のフードペアリングを体験。その食中酒としての魅力が伝えられた。  *カムバック・サーモンとは、戦後の高度成長期の自然破壊により途絶えたサケの回帰を復活させる活動。宝酒造は1979年に支援を発表し、宝焼酎「純」の協賛記念ボトルの売り上げを寄付するなど、その活動に貢献した。
マスタークラス後のランチでは「然土」のフードペアリングを体験。その食中酒としての魅力が伝えられた。

かくして幕を閉じた「然土」の初マスタークラスだが、その数日後にアカデミー主演女優賞を受賞したハリウッドスターからのオーダーが入るなど、すでにその影響は大きく、早く、世界へと波及している。一部の人だけが知るニッチな酒ではなく、誰でもが「飲んでみたい」と希求し、実際に手にすることができるプレミアムな日本酒「然土」。この秋にはプロジェクトスタート以来5回目の醸造分がリリースされるが、その物語はまだ始まったばかりだ。

松竹梅白壁蔵「然土」720ml
原材料名:米(国産)、米麹(国産米)
アルコール度数:16 ~17%
参考小売価格:10,000円(税抜)
お問合せ:宝酒造(https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/nend/
オンラインショップ:(https://shop.takara.co.jp/shopdetail/000000000346/


おおはし・けんいち◎株式会社山仁代表取締役社長。家業の酒類専門店 株式会社山仁(宇都宮市)での経営を通じて酒類への造詣を深める。2006年に世界最大のワイン教育機関であるワイン・アンド・スピリッツ・エデュケーション・トラスト(WSET) のディプロマを取得後、15 年には日本在住の日本人で初めてマスター・オブ・ワイン協会(IMW)認定のマスター・オブ・ワインとなる。世界最大のワイン審査会の1つであるインターナショナル・ワイン・チャレンジを始めとして、多くの国でワイン審査員を務めるほか、同審査会でも16年には世界で唯一のタイトルとなる「IWC パーソナリティ・オブ・ザ・イヤー」に輝く。

よしたけ・りえ◎日英ビジネスコンサルタント、日本酒プロモーター。海外と日本との架け橋になることを志し86年に渡英して以来、貿易、文化交流、ワイン流通など、様々な分野で日英を繋ぐ業務に携わる。2006年より日本酒造青年協議会(酒サムライ)の依頼を受け、インターナショナル・ワイン・チャレンジの日本酒部門の設立運営に携わる一方、独自の日本酒普及活動を展開。日本酒の認知度の向上に貢献しつつ、ロンドンのグローバルな情報発信力を使い、世界中に日本酒の魅力を伝える努力を続けている。日本酒造組合中央会英国デスク。農林水産大臣賞、外務大臣賞、旭日双光章受賞。

おおたに・ふみひさ◎宝酒造株式会社商品第三部部長。松竹梅のブランドマネジメント全体を統括。

promoted by 宝酒造 / text and edited by Miyako Akiyama / photographs by Yuji Kanno