チップのベンチマーク至上主義に挑むPixel 10 Pro
Pixel 6以降、グーグルはQualcomm(クアルコム)のSnapdragoプラットフォームから離れ、自社設計のTensor Mobileチップに移行した。Pixel 6からPixel 9シリーズまではサムスンが製造を担当していたが、Pixel 10ではTSMC(台湾積体電路製造)とその3nmプロセスに切り替わった。しかし、その基本理念は変わっていない。CPUやGPUの最高ベンチマークスコアを追求するのをやめ、代わりに機械学習やその他の人工知能アプローチの処理をより高速かつ効率的に行う特化型ハードウェアに注力するのだ。
特筆すべきは、グーグルがTensor G5チップセット上でローカルに実行できるGemini Nanoの新モデルを開発したことだ。これは、PIM(個人情報管理)アプリ全体の情報を取り込んで関連データを抽出する「マジックサジェスト」、通話中のリアルタイム音声翻訳、撮影直前の写真の構図や照明についてリアルタイムで提案する「カメラコーチ」といった機能に直接結びついている。
グーグルは「どのスマートフォンが最も速いか?」という問いを「どのスマートフォンが最も賢いか?」という問いに置き換えようとしているのだ。
この動きはすでにスマートフォンのチップセット設計に影響を与えている。クアルコムのSnapdragon 8 Eliteを巡る市場を見れば、オンデバイスAIモデル向けに特別に設計された「Qualcomm AI Engine」とそのニューラル・プロセッシング・ユニットが強調されていることがわかる。サムスンの次期Exynosチップセットも、AIモデルに対応するために同様の道をたどると予想される。
この純粋な性能からの脱却は、チップセットがもはや単体で評価されなくなったことを意味する。グーグルは自社設計のカスタムシリコン、独自のNanoモデル、そしてマジックサジェストのようなファーストパーティ製ソフトウェアを組み合わせている。これを再現するのは容易ではない。
他のメーカーが、グーグルのサポートやより深いパートナーシップに頼らずに、自社の端末でこれを再現することは困難だろう。現在、これらのAI機能を体験できるのはPixelだけである。
グーグルがTensorと関連ソフトウェアをライセンス供与することがあるのかどうか、興味深いところだ。もしそうなれば、AIファーストのスマートフォンを定義する上でのグーグルの地位は確固たるものになるだろう。


