キャリア

2025.08.30 10:00

職にしがみつく「ジョブハギング」の増加が顕著に、経済不安の時代に企業と社員が今すべきこと

DNY59/ Getty Images

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私は過去、2021年と2022年に広く見られた「ジョブホッピング(転職の繰り返し)」の長所と短所について書いたことがある。しかし、北米では勤労感謝の日が近づく中、労働市場が鈍化し、現在の職にしがみつく「ジョブハギング」が増えてジョブホッピングに取って代わりつつあることが新たな調査で示されている。転職を繰り返す人はもはや給与を大きく増やすことはできず、職にしがみついている人は今のところ転職しない方が安全だろうと考えており、パターンがこれまでと逆転している。

雇用の不確実性からくるトレンド

労働者、特にZ世代は現在の職に必死にしがみついている。これは、今の仕事がうまくいっているからではなく、今後どうなるか不確かだからだ。大規模なレイオフや物価の高騰、経済の圧迫などが見られる中で、職場での心配や不安はこれまでにないほど増大している。経済が極めて不透明な中、予測不可能な新しいチャンスに飛びつくよりも、現在の職に留まっている方が安全だと考える労働者が増えている。

経済や政治が混乱している今、ベッドに入って布団を頭からかぶりたくなるかもしれないが、それはあなただけではない。仕事の不確実性は脅威であり、心配や不安が募り、実際に職を失うよりも健康に大きなダメージを及ぼす。だが、キャリアに不確実性はつきものだ。将来のことは誰にもわからず、ある程度の不確実性と付き合っていかなければならない。予測可能な現在の職の維持に固執するのは、仕事がなくなるかもしれないときにあっては自然な反応だ。

米リクルート企業のSummit Group Solutions(サミット・グループ・ソリューションズ)の共同創業者で最高経営責任者(CEO)のジェニファー・シエルケは、ジョブハギングは仕事への忠誠のように見えるが、実際は停滞であり、リーダーがこの低い離職率を成功として扱えば、市場が緩んだときに人材流出の引き金となる「静かな意欲喪失」を見逃してしまうと語る。シエルケは書籍『Leading for Impact:The CEO's Guide to Influencing with Integrity』の著者でもある。

「2020年の新型コロナからの回復期に『予想』されたことの直後に起こったレイオフの嵐により、すでにダメージを受けた市場から安心感が拭い去られた」とシエルケは言う。「雇用統計や予算の制約、そして絶えず心の奥底にある恐怖が職場に入り込み、今の仕事にしがみつくことが安定と安全のための論理的な動きのように見える。人々は引っ越して、リモートで働くようになり、経済が好調な時期を経験した。その反転はほとんどの人にとって不安なものだ」

「ジョブハギング」の兆候

シエルケはジョブハギングは赤信号だとし、その兆候をいくつか挙げている。

・チームの行動や雰囲気に影響を与えるようなストレスの増加

・チーム全体や最重要の取り組みに最も貢献する重要な分野ではなく、自分の能力を強調するために自分の職務で得意とする分野に集中するようなパフォーマンスの変化

・従業員が卓越した仕事ぶりでポジションを継続できるのであれば、チームに貢献し得る他の職務や機会で手伝うことを熱望する

・従業員が現在の職務では能力を持て余しており、本来つくべきではない職務についているが、経済不安からその職にしがみついている

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翻訳=溝口慈子

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