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2025.08.29 08:00

AI株に迫るバブル懸念――25年前のドットコム暴落が警告する株価急落リスク

Yuichiro Chino / Getty Images

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2000年のドットコムバブル期、ネットワーク機器大手シスコは時価総額5550億ドル(約81兆円)に達し、「世界で最も価値のある企業」とされた。しかしその後わずか2年で株価は90%下落し、投資家に深い傷を残した。いま米国市場では、エヌビディア(時価総額約628兆円)やパランティアといった人工知能(AI)関連株が急騰し、S&P500の構成比もテクノロジー銘柄に大きく偏っている。当時と同じように、熱狂の陰でバブル崩壊の懸念が広がりつつある。

1990年代ドットコム期の熱狂と崩壊

1990年代の終わり、すべての証券ブローカーは、インターネットが人々の暮らしのあらゆる側面を変えるという話を盛んに語っていた。その内容は、テクノロジーが商取引から友人との交流、研究やキャリア形成に至るまで生活のあらゆる場面を変え、インターネットのない世界は想像できなくなる、というものだった。

その物語は多くの人が想像した以上の規模で現実となった。しかし、その熱狂に飛び乗った投資家たちは、そう感じられないかもしれない。最初に訪れたのは2000年3月の暴落で、株式市場全体は最終的に49%下落した。さらに悪いことに、2000年初頭の時価総額上位10社のハイテク株を保有し続けていた場合、結果は惨憺たるものだった。2015年末までのリターンは、10銘柄すべてがS&P500を下回っていた。そして現在に至るまでの四半世紀で、リターンが市場全体を上回ったのはマイクロソフトとオラクルのみだ。シスコやインテル、クアルコム、IBMといったその他の銘柄は、投資家を大いに失望させている。

AI株高騰と投資家への警鐘

このドットコム期の歴史は、今日の投資家への教訓となる。彼らは、AIがかつてのインターネットと同様に世界を変えるという信念で株価を押し上げているからだ。現状のS&P500指数に占める情報技術セクターの比率は33%以上となり、1990年代後半のドットコムバブル期の水準に並んでいる。半導体設計企業エヌビディアは、わずか3年で時価総額が10倍の4.3兆ドル(約628兆円。1ドル=146円換算)となり、単独で同指数の8%を占めるまでになった。だが、仮にAIが多くの人々の予想どおり変革的な存在になるとしても、これまで最大の恩恵を受けてきた銘柄が、今後数十年の勝者であるとは限らない。

アーノットが語るバブルの構造

「株価と企業を切り離して考えることが重要だ。企業そのものは優れた製品を持つ素晴らしい存在だ」と、カリフォルニア州ニューポートビーチを拠点とする投資アドバイザリー企業Research Affiliatesの創業者で会長のロブ・アーノットは語る。「バブルが弾けるのは、物語が根本的に間違っているからではなく、細部に誤りがあるからだ。例えば、成長率やその持続期間を過度に楽観視したり、競争によって市場シェアを奪われるリスクを過小評価したりする点にある」。

過去のドットコムと重なる株価水準

直近のS&P500の株価収益率(PER)は約30倍で、過去の平均の約20倍と比べると大幅に割高になっている。また、ナスダック100のPERも33倍に達している。2000年初頭のドットコムバブル期では、ピーク時のS&P500のPERは約34倍、ナスダック100は70倍を超えていた。

今年の株価上昇の大部分はハイテク株がけん引している。S&P500に含まれるそれらの株は、平均で利益の約41倍、売上高のほぼ10倍という水準で取引されている。特にエヌビディア株は、PERが57倍とハイテク株平均(約41倍)を大きく上回り、さらに時価総額は直近12カ月の売上高1485億ドル(約21.7兆円)の29倍に達している。またブロードコム株も異例の高騰を見せている。2023年の年初から株価が400%以上も上昇し、時価総額は1兆ドル(約146兆円)を突破。その結果、PERは110倍に達している。

パランティアやAMDの過熱評価

一部のより小規模な企業のバリュエーション(評価)は、さらに不可解だ。データマイニング用ソフトを開発するパランティア・テクノロジーズの株価は、2023年初頭から2400%急騰した。同社の直近1年の売上高は34億ドル(約5000億円)と、前年同期比39%増に拡大し黒字化も達成している。にもかかわらず、その時価総額は売上高の100倍を超えている。半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価も、過去10年で100倍に上昇し、PERは約97倍に達している。

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編集=上田裕資

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