投資家心理と押し目買いの連鎖
こうしたプレミアム(割高感)は夏の間も上昇を続けた。S&P500は4月8日以降に約30%上昇しており、年初の関税発表に伴う19%の急落から瞬く間に回復し、史上最高値を更新した。AI関連のETFである「グローバルXAI&テクノロジーETF」は、同期間に43%上昇した。過去16年間、「下落局面では買え」と教えられてきた世代の投資家は、実際にその経験で成果を得てきた。そのため、関税やインフレ、雇用市場の悪化に不安を感じながらも投資を続けている。
「バブルの初期は『乗り遅れる恐怖(FOMO)』から市場に飛び込むが、やがて『自分だけが参加していないことへの焦り』から、市場に戻らざるを得なくなる」と、インベステック・リサーチ創業者でプレジデントのジム・スタックは語る。「彼らは、大きな利益を期待しているわけではない。ただ、市場に参加していないことに耐えられなくなるのだ」。
理論上、株式市場のバブルは時間の経過とともに徐々に解消される可能性がある。株価が横ばいで推移する間にファンダメンタルズが徐々に追いつく想定だ。しかしスタックは、現実には「ハードランディング(急激な調整)」を伴うことがほとんどだと指摘する。問題は、それがいつ訪れるかだ。
運用資産24億ドル(約3504億円)という運用会社インフォームド・モメンタム・カンパニーは、株価の勢い(モメンタム)に基づいて投資判断を行う。同社の米国大型株ファンドでは、エヌビディアやブロードコムといった高値圏のハイテク株も保有している。 同社の最高投資責任者トラヴィス・プレンティスは、見切りをつけるべきシグナルの1つは「企業の業績がアナリスト予想を上回り続けているにもかかわらず、市場が決算に悪い反応を示したときだ」と述べている。
「企業が勢いを失い、トレンドを崩し始めたらすぐに動くべきだ。ファンダメンタルズが完全に崩れるのを待っていては、たいてい手遅れになる」とプレンティスは続けた。
ドットコム時代の「四騎士」との類似
ベテラン投資家たちは、これが過去に見たものの繰り返しになることを恐れている。現在の強気相場を「マグニフィセント・セブン」が牽引しているのに対し、ドットコムバブルを牽引したのは、その当時に「四騎士」と呼ばれたシスコやインテル、デル、マイクロソフトらだった。その当時、インターネットのインフラを担う機器の最大手だったシスコは、強固な利益率と爆発的成長へと向かう確実な道筋を持つと信じられ、一時は世界で最も価値のある企業となった。
シスコの時価総額は2000年3月に5550億ドル(約81兆円)に達し、PERは150倍以上を記録していた。しかしその2年後、その価値の90%が失われた。その後25年間で売上高は3倍の570億ドル(約8.3兆円)に拡大したものの、時価総額はピーク時の半分にとどまっている。
インテルも同様に低迷している。一方デルは壮絶な株価の崩壊を経て、マイケル・デルによる見事な再建が実現した。だが2013年、彼が同社を非公開化した際には、株主はピーク時を大幅に下回る価格で株を売り渡さざるを得なかった。「四騎士」の中で投資家に報いたのは、唯一マイクロソフトだけだ。ただし、2000年代に株価が73%も下落する苦難を乗り越えた後のことであり、成果が出るまでには長い時間を要した。
高収益でも競合に狙われる現実
「城外の強固な堀(事業の優位性)が自分を守ってくれるという考え方があるが、それは数年間は通用するかもしれない」とResearch Affiliatesのアーノットは語る。「しかし、利益率が50%もあれば、競合はあらゆる手を尽くして、その高収益なビジネスを自分たちのものにしようとするだろう」。


