雇用を増やしながら世界と競合する製造業
自動化をめぐる議論で問題になるのは、何も実現可能性ばかりではない。自動化の導入による影響、とりわけ米国製造業の労働への影響についても考える必要がある。
米国は自動化を積極的に進めることができるし、そうすべきだ。米国が世界一の製造業大国の地位を取り戻す道は、テクノロジーによってしか切り開けない。米国は、かつて国外に移転した生産の多くを国内に回帰させ、活気ある製造業を再建するだけの独創力を備えている。中国と競合していくには、新しく、非常に先進的で、自動化された工場をつくっていく必要がある。
だが米国の場合、それは労働者の排除を意味しない。そうした事態は米国ではすでに起こってしまっている。2001年から2018年までの間に、対中貿易赤字が拡大するなか、米国の製造業では約280万人の雇用が失われた。しかも、米国の製造業は現在はむしろ人手不足に直面している。製造業研究所とデロイトの調査によると、向こう8年間、製造業の職200万件近くが埋まらない可能性があるという。
米国は失われた雇用をすべて取り戻すだろうか。もちろんそうはならないだろうし、それが目標でもない。米国はむしろ、ロボットを活用して人間の仕事をより安全・清潔でハイテクなものに、そしてもっと魅力的なものに変えていこうとしている。ロボットは、米国の製造業者による生産コストの削減のほか、品質や競争力の向上に役立つだろう。また、米国の製造業が現在のような深刻な人手不足を埋め、生産を継続していく助けにもなる。米国は、よりハイテクでインパクトの大きい職を増やし、反復的な作業の多い残りの職も将来の労働力に合うように進化させていくことができるし、そうすべきだ。そのためにはリスキリング(新たなスキルや知識の習得)への投資が必要になるだろう。この投資は十分見合うものである。
「消灯製造」は中国の戦略の一部かもしれないが、米国がそれに倣う必要はない。米国製造業の未来は、人間を必要としない工場の構築にかかっているのではない。それは、人間の創造力と機械の自動化が協働し、それを力に絶えず進化を続けていく、よりスマートな工場の構築にかかっている。ロボットへの投資は人間の仕事をなくすためでなく、より良い仕事を生み出すために行うべきだ。ここでのより良い仕事というのは、より安全で専門的、そして世界的な圧力に対してより強靭な仕事を指す。米国は工場を暗くすることを目指すのではなく、製造業にとってより明るい未来を追求すべきである。


