北米

2025.08.27 16:00

どんどん「消灯」する中国の工場、米国の製造業は光明を見いだせるか?

中国の浙江省寧波市にある高級車ブランド「Zeekr(ジーカー)」の工場で2025年5月29日、電気自動車(EV)の生産ラインでロボットアームが車体部品を溶接する様子(Kevin Frayer/Getty Images)

「消灯」できる製造業者とできない業者

反復性の高い作業を行う工場が「暗く」なるというのは理解しやすい。米国企業が中国にアウトソースした製造工程の多くがまさにそうした作業で、その工場では毎日、何時間も同じ作業が繰り返されている。同じ部品をひたすらプレスするといった作業で、見回してみてすべて正常に動作しているようであれば、人間はたしかにその場から立ち去ることができるだろう。この段階では、CNC(コンピューター数値制御)をプログラムするために人間が現場にいる必要はない。作業内容を変更したり、部品を移動させたりするための人間も不要だ。たいていの場合、監督者は遠隔の制御室からモニターし、必要に応じて調整するだけでよいだろう。

advertisement

米国では、工場が完全自動化のレベルに達する機会は少しはあるかもしれないが、大多数の工場はそうならないだろう。関税があっても、最も反復作業の多いタイプの工場はおそらく米国に戻ってこないだろうし、それで問題ない。米国企業は一般にSKU(商品の最小管理単位)が多いので、生産ラインで頻繁に生産品目を切り替える必要があり、何時間も同じ作業を繰り返すのはまれだ。こうした生産工程の効率化や迅速化のためにロボットを導入する余地はあるものの、やはり人間による支援がある程度は必要になるだろう。

つまり、米国の製造業者はこれまで以上のペースでロボットの導入を進める必要がある一方で、目指すべき方向は「消灯」、すなわち完全な自動化ではない。米国の製造業が長期的に世界で競争していくためには、ロボットの導入を加速するしかない。しかし米国の製造業は、工場内の変化や技術進化の速さによって「消灯化」戦略がたんに非現実的なものになる時代に入る公算が大きい。米国製造業の今後のあり方として望ましい状態は、製品だけでなく、その製造方法も継続的にアップグレードしていくことだ。

実のところジーカーの工場でも、照明が落とされた一角以外では、内部ケーブルの組み立てといったさまざまな作業を人間の労働者たちが行っている。WSJは「ロボットのメンテナンスなどの作業のために労働者が工場内に入ることもある」と言及している。

advertisement
次ページ > 自動化の導入加速と雇用の拡大を両立させる必要

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事