若手ハイエンド人材を対象に、これから先のキャリア戦略を考えるために役立つさまざまなコンテンツを提供する「CAREER FORUM 2025 Supported by ASSIGN」が6月28日に開催された。その熱気あふれる会場の模様をお届けする。
終身雇用制度の終焉、ジョブ型雇用の普及、副業や越境キャリアの常態化など、近年、働く環境は大きく変化している。それに伴い、キャリアも「用意された道を進むもの」から、「自ら意味を問い、切り拓くもの」へと再定義されつつある。
こうした変化の最前線に立つ若手ハイエンド人材が、自身の現在地を見つめ直し、これからの指針を得るために開催されたのが、「CAREER FORUM 2025 Supported by ASSIGN」だ。
申し込みは1,200名を超え、当日会場には企業の出展ブースが並び、多彩な講演が行われ多くの若手ビジネスパーソンが参加した。なかでも注目を集めたのは、各業界のトップランナーが次世代のビジネスパーソンに向けて、自律的なキャリア形成のヒントを語った「CAREER SESSION」と、社員のキャリア支援に積極的に取り組む企業を表彰する「CAREER LEADERSHIP AWARD」だ。
各界のリーダーたちがキャリア形成のヒントを提示
CAREER SESSIONではまず、ベネッセコーポレーション専務執行役員で家庭学習カンパニー長を務める橋本英知が「マーケターのキャリア戦略」をテーマに講演を行った。
20代から30代にかけて、セールスプロモーションの企画・制作から新商品開発、新規事業開発、経営企画、マーケティング戦略まで幅広く携わってきた橋本は、どのようにマーケティングと向き合ってきたのか。
「これまでのマーケティング業務は、コミュニケーションや広告といった狭い範囲を指していたことが多いですが、本来はその上流にプロダクトマーケティングなどがあり、事業活動に関わる大部分がマーケティングには含まれます」
そうした幅広い領域のなかで、マーケターはどのようにキャリア戦略を描いていくべきなのか。橋本は、特定の専門に絞らず、幅広く取り組むことも戦略の1つだとアドバイスする。
「マーケターという職種の魅力は、自分のキャリアの道筋をいくつも描けることにあります。自分のやりたい領域が明確にないのであれば、まずはいろいろなプロセスの経験を積んでみることをおすすめします。そうした積み重ねが、マーケターとしてのキャリアの幅を広げ、将来的には事業責任者や経営メンバーへの道につながります」
続いて登壇したのは、サイバーエージェント常務執行役員CHOの曽山哲人だ。テーマは「人事のキャリア戦略」で、20年に及ぶ人事の経験から、社内外で活躍するためのキャリアの描き方を伝授した。曽山によると、評価される人は、評価よりも評判を大事にしているという。
「評判とは信頼です。周りの人を大事にする行動をとると、必ず周りの人から大事にされます。人を大事にすることで、他人からの応援が集まるのです」
曽山によると、今の時代に理想的なキャリアを描くためには、3つのポイントを意識するべきだという。1つ目は、強みの言語化だ。
「先輩や上司に、自分の強みがどう見えているかを聞いてみましょう。『なるほど』と思うものもあれば、意外に思うものもあり、それが強みになるかもしれません」
2つ目は、キャリアオプションをもつことだ。
「これから生成AIがどう進化していくかわからない中、キャリアのデザインをきれいに1本線で描く時代もはや現実的ではありません。やりたいものをリストアップして、自分の現在地や機会とすり合わせていくほうが、チャンスは増えるはずです」
そして、3つ目は、意思表明だ。
「やりたいことがあるなら、上司との面談の際にそれを必ず口に出してください。ポジティブにしろ、ネガティブにしろ、何らかのフィードバックがあります。そのフィードバックに向き合えば、より早く成長ができるはずです」
セッションの最後を締めくくったのは、EYストラテジー・アンド・コンサルティング代表取締役社長の近藤聡だ。テーマは「コンサルのキャリア戦略」で、近藤はキャリアへの考え方に対して、経験がすべてとの考えを示した。
「キャリアは自分の前にあるものではなく、後ろにできるものです。人を採用するときには、将来何をやりたいかは聞きません。何をやってきたかがポイントで、自分が関わったプロジェクトを“意味ある体験”にまで高められているかが重要だと考えています」
どういう人がコンサルタントに向いているかについて近藤は、ひとりで問題解決できる力が必要だと強調した。
「コンサルは倫理観と専門性を備えていれば、基本的にはひとりですべてが成り立つ仕事です。ですが個人でやれることは限られているので、大きな事務所やファームをつくり、グローバルで連携していきます。しかし、それはあくまで“ネットワーク”であり、ワンセットのサービスを自分で提供することがコンサルには求められます。個人を確立しようと考えている人でないと続けていくのは難しい仕事ですし、その意識があるかどうかで、キャリア形成は変わるでしょう」
約5,000名の若手ハイエンド人材に選ばれた企業を表彰
CAREER LEADERSHIP AWARDでは、約5,000名の若手ハイエンド人材に実施したアンケートをもとに、「社員のキャリア形成」という観点で評価が高かった企業を表彰。各社の代表者が記念の盾を受け取り、自社の取り組みやキャリア支援への思いを語った。
3位には、パーソルビジネスプロセスデザイン、X Mile、ウルシステムズの3社が選出された。AIやDX関連サービスなどを提供するパーソルビジネスプロセスデザインの執行役員・泉忠治は、キャリア形成との向き合い方についてこう語る。
「キャリアを築く上で、『自分と仕事にフィット感があること』が非常に重要です。とはいえ、「いまの仕事に違和感がある」といった本音を、上司に率直に伝えるのは簡単なことではありません。だからこそ当社では、そうした声をあえて言ってもらうことを大切にしています。どうしたら本音で話してもらえるかを常に考え、丁寧に寄り添いながら向き合ってきました」
物流業界や建設業界などのDXを支援するX Mile(クロスマイル)では、社員一人ひとりのキャリアをいかに支えるかに力を入れている。代表取締役CEO 野呂寛之は次のように語る。
「当社には専門のトレーニングチームがあり、新人の教育に非常に力を入れています。人事企画のチームも社内でのキャリア形成に力を入れており、毎月数十名と面談をして、そのひとのキャリアをどのような形で実現できるかを話し合っています。人材紹介、ソフトウェア、M&A仲介といろいろな事業があるので、キャリアパスを柔軟に磨けることが当社の特徴です」
一方、ITコンサルティングで経営課題を解決するウルシステムズ執行役員の⽯﨑康寛は、キャリアに対する社員の主体性を重視する姿勢を語った。
「私たちは、上から業務を強制するような社風ではありません。社員一人ひとりに自分自身のキャリア形成にとってプラスになるようなプロジェクトへのアサインを求めており、それを上位層のメンバーがサポートしています。プロジェクトでの経験が自分のプラスになっているという実感を社員が味わえるよう、親身になって考えていることが皆さんに通じたのだと捉えています」
2位に選出されたのは、営業代行やビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)を提供するセレブリックスだ。同社コーポレート本部 人材開発セクション イネーブルメント室 室長の岩名地 卓思は、「組織と個人の成長の立役者になるというテーマに掲げて、各種研修や1on1によるコーチング、フィードバックを組織的に実施しています」とキャリア形成に関する取り組みを紹介。
続けて、「営業活動やマーケティング活動など何かのプロフェッショナルを目指すことで、何者にでもなれる環境を私たちは用意したいと思っています」と締め括った。
そして、1位に輝いたのは、クラウド人事労務システムを提供するSmartHRだ。同社ビジネス採用部長の福井清は感謝を示すとともに、社員のキャリア観を丁寧にくみ取る姿勢について紹介した。
「当社では半年に1回、キャリアンケートを実施して従業員がどのようなキャリア観をもっているかを確認しています。希望に沿った異動の実現も多く、セールスとして入社して今では経営企画にチャレンジしているメンバーもいます。同じ職種で縦に上がっていくだけでなく、多様なキャリアを形成できる環境が当社にはあります。それをさらに進めるために今年下半期からは、社内公募制度の運用も開始し、さらなる機会の創出を目指しています」
最後に福井は、キャリア形成の中核となる“人としての姿勢”にも言及した。
「各部門のハイパフォーマーにインタビューをしたところ、共通していたのは『素直さ』があることでした。周囲のフィードバックを受け入れて、自分のことを変えられる力が高く、そういう人柄ゆえに、周囲を巻き込んでいい仕事をできるという事例がたくさんありました」
会場の若手ハイエンド人材たちは受賞企業を祝福するとともに、これからの自分のキャリアを具体的にイメージしているようだった。
変化の激しい時代において、これからのビジネスパーソンには、自分自身の価値観や働き方を見つめ直し、中長期的なビジョンをもってキャリアを設計する主体性が求められる。
「CAREER FORUM 2025」は、第一線で活躍する専門家や企業の知見を通じて、そんな時代にふさわしいキャリアのあり方を提示する貴重な場となった。同フォーラムが提供した視座は、すべての働く人にとってこれからの指針となるに違いない。



